「あっつい!」
親から貰った地図を片手に坂道を登る。
今は春というのに、この暑さ。最近の日本はどうなっているんだ。
そして俺、(こう)(さか)(ふう)()は今日何度目か分からない言葉を発する。
「暑い〜〜〜〜!」
 俺は今、高校一年生となろうとしている。
と、言うか明日が入学式だ。
高校生になる俺は、親が無理を言って親抜きの生活をすることになった。
俺の親は、俺が高校に受かったその日にこう言ったのだ。
「父さんと、母さんはこの家を売り、世界一周旅行に行ってくる。旅行は三年掛かるから、お前は私たち抜きで生活をしなければならない」
その時は夢かと思ったよ。
そして今、それが現実になっている。
親父が言うには、俺が今から行く家には
『しっかりものの、頭の良い、優しい男の子』がいるらしい。
一人暮らしというのは少し不安だったが、同居人がいて協力し、暮らしていくのは頼もしい限りだ。
それにしても、この親から渡された地図の雑さはなんだ!
これじゃあ小学2年生が書いた地図と言っても誰もわからないだろう。
その地図を分かってしまう俺・・・。
やっぱりあの無神経な親とは親子ということなのか。
そして、これから新しい生活を送る家に着いた。
家と言うかマンションだ。
「405か・・・」
俺はそう呟き4回の405号室の前に立つ。
そして俺はインターフォンに手を伸ばす。
ピンポーン
綺麗に音がなった。
「は〜〜い!」
と、可愛らしい声が中から聞える。
・・・ん?
可愛らしい?
ガチャっと勢いよく家のドアが開いた.
そこに居たのは髪が長く綺麗で、くりっとした目の女の子。
「ど、どちらさまでしょうか?」
第一声を発したのは女のこのほうだった。
ん?俺は部屋を間違えたのか?
確か、ここにいるのは俺と、しっかりものの、頭の良い、優しい男の子がいなくてはいけないのに
俺と、髪が長く綺麗で、くりっとした目の女の子がいる。
・・・何故?
「あ、あのぉ〜」
女の子が困っているのが分かる。
「え、えっと。ここってこの地図の場所の405号室ですよね?」
一応確認を取る。
女の子はその地図をじっと見た後頷いた。
「俺。ここに今日から住む予定なんですけど・・・」
「私も、今日からここに住む予定・・・なんです」
・・・え?
「君もなの?」
「は、はい・・・。私は、女の子と同居するって聞いていたんですけど・・・男の方ですよね?」
そりゃ見て分かるだろ・・・。
「俺は、男の子と同居するって親から聞いてて・・・」
・・・はい。沈黙です。
俺はいつの間にか携帯を持ち、親父に電話を掛けていた。
『はい、もしもし』
「親父!どうなってんだよ!」
『そう怒るな。結構可愛い子だろ?』
「そりゃ可愛いけど・・・」
俺はそういった後女の子を見た。
何かボーとしていて本当に可愛い。
『ならいいじゃないか』
親父の声で我に返った。
「それと、これとは関係ないだろ!一人暮らしでいいから部屋を用意しろ!」
『そのマンションにはもう部屋が無くて・・・。同居しても良いっていう子がその子しかいなかったんだ。まぁこれからその子と同居するわけだから色々と我慢しろよな』
そういう親父の顔がニヤついているのが想像できる。
と、言うか色々とは何だ!色々とは。
『まぁ頑張れよ!じゃあ』
プープープー
「お、おい!」
「お父さん?」
女の子は首を横にまげて聞いてきた。
「うん。まぁ頑張れっていってた・・・。」
「あ、あの家に入りませんか?」
「え?あ、うん」
俺は今、家の前に突っ立っていることに気付いた。
中に入ると、ダンボールがいくつか置いてあった。
やはりあの女の子は今日からここに住むらしい。
ここの部屋はぱっと見たところ、2LDK、バス、トイレ付の別だな。
しかも・・・一個の部屋が大きいな。
二人で住んでもあまるぐらいの大きさ。
「結構大きいですよね?けど、家賃が高くて・・・
だけど、同居してくれるならその同居の方が一括払いしてくれるって聞いて・・・。けど女の子だと思ってて」
「そうなんですか・・・」
親父か・・・金の欲求ではめたな・・・。
またもや沈黙。
「あぁーーーー!」
「な、何!?」
女の子がいきなり大きな声を出したのでビックリ・・・。
「自己紹介がまだでしたよね?私は、(あき)(もと) 明日(あす)()、15歳の今年から高校一年生です!」
いきなり何を言い出すのかと思えば、自己紹介か。俺もしたほうがいいな。
「えっと、俺は香坂 風紀、15歳で高校生一年生になる所です」
「風紀君ですか。こうなったのも何かの縁です。これから宜しくお願いします」
「宜しく。あと風紀でいいよ。同じ歳なんだし。俺も明日香って呼ばしてもらいます」
「はい!!」
笑顔のような真面目な顔で返事をするので笑えてきた。
「な、なんですか?」
けど、その事はいえないよな。
「何でもないよ。あと、敬語はやめとこう。これから一緒に住むんだし」
「はい!!!」
ホラ・・・笑えるよ。
「だから、何ですか〜!」

さぁて俺の生活はどうなるのやら


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