「俺は素直だ!!!」
部活中の出来事である。
俺は、大きな声を出した。
「風紀野郎!静かに!」
部長に注意され俺は、やるせない気持ちでいっぱいだった。
「お前は素直じゃない。女性恐怖症ということを理由に、恋を恐がっているだけだ」
それは、言い返せなかった。
確かに、恐い。
凛の時のような辛い思いはしたくない。
「昨日からおかしかったろ?」
亮平が問いただしてくる。
無言で頷く俺。
「何でか分かってるよな?」
無言のまま俺は頷きはしなかった。
首を横に振りもしなかった。
亮平が、シャープペンシルと小さな紙を取り出し、何かを書き始める。
「全てが決まったときに、ここに行け」
渡されたのは、沙希の住所と思われる数字と文字。
全てが決まったとき・・・。
一通り部活も終わり、映画公演の準備にかかる。
映画研究部の俺だって映画を見るのは初めてだ。
少し緊張でもあり、ワクワクしている。
時刻、1時30分。

映画が始まる。
最初、フレームに出されるのは俺だ。
なんだか恥ずかしい気持ちがある。
そして、どんどん話も進んで行き、クライマックスに。


波の音が二人を包む。
二人は崖の端に座り抱き合う状態である。
「死にたくないよ」
白い服を着た女がそう呟いた。
男はその女を強く抱きしめる。
「大丈夫」
落ち着かせるためにそういったのだろう。
コホコホと女が咳をするたびに心配そうな顔をする。
「ここで、3度出会った男と女は永遠の愛を手にできるんだろ?」
男が女に質問する。
女は無言で頷いた。
波の音が止まり、女が口を開く。
「大好き」と。
男はさらに強く抱きしめ、
「俺もだ」と呟いた。


俺は、その光景を見た瞬間思った。
この男の言葉は偽りじゃないんだと。
ようやく分かった。
俺は・・・明日香が好きだ。
女として、この世の女性として、





明日香が好きだ。





俺はその場を出た。
大きな音が出ようが構いなし。
ある紙を頼りに、沙希の家を目指す。
学校の敷地内を出るのは簡単だった。
そして、沙希の家の周辺と思われる場所までは着いた。
しかし、肝心の沙希の家が見つからない。
確か沙希は、昨日俺たちと同じで一日だったから、今日は店にはいないはず。
ということは家にいる確立が高くなる。
俺は走る。
力の限り、走る。
沙希の家が見つからない。
10分ほどうろうろしていると、『水谷』という文字が目に入った。
その近くに、沙希という名前も記入されている。
「ここか」
そう呟き、俺はインターホンを鳴らした。
ピンポーン
ガチャとドアが開く。
沙希だ。
「ふ、風紀?どうしたのこんな所に。と言うか、何故お前が私の家を知ってるんだ?」
不思議そうな顔で俺を見つめる沙希。
「そんなことはどうでもいい。明日香はいるか?」
息を切らしながらも一生懸命聞く。
「明日香は、今日の朝出て行った」
おいおい。本当かよ。
行方不明・・・って言うことか?
糞。
こんなときに、明日香とは巡り合わないのかよ。
他に、明日香が行きそうなところはない。
仕方なく、家に戻る俺だった。

トボトボと家に帰ると、人影がある。
誰だ?
と、思いつつも不思議と気持ちが舞い上がってくる。
期待しているのだ。
明日香ではないかと。
俺は走って駆け寄る。
案の定、明日香だった。
「ふ、風紀・・・」
明日香が、俺たちが初めて会った時のこの場所、家の前で再び会うことに。
「明日香・・・」
俺たちは互いに互いの名前を呼ぶ。
「あの、風紀・・・私」
そう言って、明日香は俺の隣を通り抜けようとした。
俺は、その明日香の手をつかむ。
「明日香」
再び、俺は明日香を呼んだ。
腕をぶんぶん振って俺から逃げようとする明日香。
「やめて!風紀には、凛ちゃんが・・・幸せがあるんでしょ?」
泣きそうな声で、訴えてくる明日香。
俺は、何も答えられない。
だけど、手は離さない。
明日香の顔をじっと見る。
何度も言う。俺はこいつが好きだ。
だから俺はここにいる。
女性に触れないのに、俺は明日香の手を離さない。
俺は、重たい口をゆっくりと開いた。
「明日香。俺はお前には二つ言わなければならないことがある」
明日香は、腕を振るのをやめ、俺の話しに耳を傾けている。
「ひとつは俺のこと。俺は女性恐怖症だ。ずっと黙っていたが、女に触れることは出来ない体質だ。喋ることもある意味苦手だ」
驚きの表情。
だけど、俺は話すのをやめない。
「そしてもう一つは、幸せのこと。明日香がいなくて俺の幸せはない。お前をなくして、笑える日々が送れるはずが無い・・・だろ。馬鹿が」
そういった後、俺は明日香の腕を引っ張り、抱きしめていた。
強く、離したくなかった。
「痛いよ・・・風紀」
力ない、明日香の声が聞えた。
耳元にふわっと聞える明日香の声。
久しぶりのような気がした。
涙が出て来た。
明日香が恋しい。
明日香が愛しい。
そして、俺は
「明日香が好きだ」
明日香は、その言葉を聞いた後、腕を回し抱きつく状態に。
そして、
「私も大好き」と言った。

二人の生活が再び始まる。

今日は、文化祭4日目、最終日。
日曜日の出来事だった。



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