今、俺は晩御飯を作っている明日香の後姿をじっと見ている。
この風景は何故か懐かしい気分になるんだ。
料理にエプロン。料理中に鼻歌。
胸が痛む。頭が痛む。
あぁ!痛い!!
「ふ、風紀?」
頭を抱えながらゴシゴシとしている俺に喋りかけてくる明日香。
「ん?」
俺は正常モードに戻り返事をする。
「あんまり見ないでよ〜」
いやいやお前が可愛いから。と冗談で言うつもりだったが、その相手は明日香。
恥ずかしくなって、明日香が料理をやめてしまうのは今の俺にはきつい。
「ごめんごめん。考え事」
俺はそう答えた。
「そっか。ご飯はあと少しだから待っててね!」
そういう明日香に笑顔を送った。
只今、同居してから約一ヶ月。
今のところは、学校にもこのことはばれていないし、噂好きの亮平もまだ気付いていない。
さすがに学校では「明日香の彼氏は風紀」という話は一応出ているようだ。
まぁ、あの沙希っていう子が言ったんだろう。
あの日以来、いつも通っているあのスーパーでは生徒に会っていない。
あの沙希っていう子が言っていないとしても、俺たちは毎日登下校は同じ。
学校一可愛いといわれている明日香がそんな行動をとっていたら黙っている男共はいないだろう。
因みにこの一ヶ月にはいろいろあった。
部活を決めるとき明日香が「一緒の部活にしようよ!」と言って、
少し変わった映画研究部に決まってそれにつられて亮平も入ってきたし、
学校の裏投票では明日香が人気ナンバーワンに選ばれたという話を耳にした。
「はぁ〜」と大きく溜息をつく俺。
「は〜い出来上がり〜!!!!」
そう言って、お皿に盛られたサラダとハンバーグを俺の前に置く。
「あとご飯と味噌汁ね!」
と言いながら、明日香はご飯と味噌汁を置く。
「ありがと」
礼儀としてこの言葉は言っておかなくてはならない。
「さぁ!召し上がれ!!」
前の席に座りながら明日香は言う。
「どう?美味しい?」
「いやいや、まだ食ってないから」
「じゃあ早く食べてよ風紀」
「へいへい」
ハンバーグを一切れお箸で切り、それを摘みながら口へと運ぶ。
ん・・・やっぱり明日香の料理は美味しい。
「・・・どう?」
上目遣いで言ってくる明日香に一瞬見とれてしまったが、正気を取り戻す。
「美味いよ。なんか主婦みたい」
「本当に!?ありがとう!!!」
それ以上褒めると明日香がよからぬ行動を起こしそうなんでそこらへんは流しておいた。
「どんな感じ?」
そう言って俺の箸を奪っていく。
そのとき、俺の手に明日香の手が少しだけ触れた。

ビクッ!

思わず後ろへと一歩下がるような形になってしまう。
「ほぅしはのふぅひ?」(どうしたの風紀?)
口にハンバーグを頬張りながら言うので少々何を言っているのか分からなかった。
「いや、なんでもない・・・」
そういいながらもとの位置へと戻る。 ってかその箸俺のであって、さっきそれは俺が使っていたのであって・・・ということは
「おいおい!間接キスだぞ?」
間接キスである。
「なに?風紀恥ずかしいの?乙女だねぇ」
「なにおじさんみたいな事言ってるんだよお前。自分の箸で食え!自分の箸で!」
そう言いながら、俺の箸を明日香から奪い返した。
「ちぇっ」
と明日香の口から聞えたのは・・・まぁ気のせいだろう。
それから俺たちはゆっとりとした時間を過ごした。
テレビを見たり、学校の話、友達の話など。
しかし二人とも過去の話には全く触れなかった。



「風紀〜!朝だよぉ!」
明日香の可愛い声が戸の向こうから聞える。
もう、このことが当たり前のようになってきた。
しかしいつになってもこの声で目覚めるのは気分がいい。
さぁ今日が始まる!
朝飯を明日香と一緒に食べて、学校へ向かう。
学校へ行く途中の道はあまり生徒が通らない。
殆どの生徒が電車で来ていて、そこからは自転車という感じだ。
まぁ他の生徒と会うとしたら校門前だろう。
教室まで明日香と同じ。
どんな運命をたどっているんだ俺たちは。
いつも通り、教室に入って30秒もしないうちに亮平が教室に入ってくる。
「おっはよぉ!今日も朝から元気ですね風紀君!」
我が右肩を強打。
昔から亮平は手加減というものを知らない。
「いったいなぁ!」
「そうそう。風紀知ってる?3組の水越さんって・・・」
と、また亮平の噂話が始まる。
もうこいつの噂話なんて耳を通り越していくだけ。
全然頭には響いてこない。
しかし、その亮平も明日香のことは聞いてこない。
「風紀〜?」
明日香の呼ぶ声が聞える。
テクテクと歩いてくる明日香を眺めている。
「な、何?」
俺が正気に戻ったときには明日香は俺の前にちょこんと座っていた。
高校は制服なので、勿論スカート。
明日香はそこらへんの不良よりかはスカートは長く、真面目ちゃんよりかは短い。
いわゆる、並みの長さ。
その明日香が俺の前にちょこんと座ると微妙にパンツが見えそうなのだが見えない位置。
女の子の長年の経験なのだろうか?見えないようにしている。
「ちょっと耳貸して」
そう言って俺の耳元に手を当てて、小さく喋る。
「あのね、友達が家に遊びに来たいって言ってるんだけど」
少しそのままの状態で無言。
椅子に座っていた無意味に俺は立ち上がった。
「その話は後でいいか?」
そう笑顔で俺は言うと明日香は大きく頷いた。
そして明日香は友達のところへ戻っていく。
さぁ、、、どうしようなものか。
そういや学校では俺たちの住所はどうなっているのだろうか?
もし、同じ住所になっていれば、今頃はもうバレているはず。
まさか、学校がそんなことを認めてる?
そんなわけがないよな。
じゃあどうなっているんだ?
あぁ!駄目だ。考えたら埒が明かない。
ここは、ばれていないことを喜ぶか。
「お〜い風紀!聞いてるか?」
亮平の声。
「え?あぁうん」
適当に答える俺。
「それでさぁ風紀・・・」
また、亮平の噂話が始まった。
そして、今日の授業も全て終わり部活が始まる。
明日香と、俺と亮平で部室・・・というより、ある教室に入っていく。
そこはなかなかの大きさの教室で、普通の生徒には「特別教室」といわれている。
その教室の入ると最初に目に入ったのが映画研究部、部長の(さわ) ()()
「こんにちは部長」と俺が言う。
そして、軽く頭を下げる俺たち3人。
「こんにちは明日香ちゃん!亮平君!それと風紀」
部長、「それと」の意味は・・・俺はやっぱりおまけなのでしょうか?
そりゃ、亮平はイケメン組みに入るし、明日香は学校一可愛いですよ?けど「それと」はあんまりでしょうが!
後、俺だけ呼び捨てにされたのは気のせいでしょうか?
最後にもう一つ!コレが一番大事。
・・・挨拶を言ったのは俺なのですよ部長。
中に入ると、5名の部員がいた。
この映画研究部は11人で成り立っている。
映画研究部は、学園祭に自分達で撮ったやつを公開しているらしい。
部員集めの部活紹介では、去年の予告を流しているらしい。
因みに、映画研究部になって初日には去年の映画を見せさせられた。
内容は、ある遊びが激しくなっていって人を殺すのに至るというホラーな映画。
今時の高校生がそんなホラーを作るのだろうか?
やっぱり高校生といったら恋愛映画というイメージが強かったりもする。
しかし、その映画はそこらへんに上映されている映画より素晴らしいものであった。
部活の大体は最近の映画の話をして終わっている。
帰りたいときには帰っていいが、一応、部活に顔を出さなくてはいけない。
そういう決まりがある部活なのだ。


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