部室・・・と言うか特別教室で俺達はのんびり、部活が始まる時間を待っている。
俺らがこの部屋に入ってから大体10分が過ぎた。
その間にサボリ癖の副部長を除いて全員来ている。
サボリ癖のある人を副部長にするというこの部活はどんな部活だろうか?
部活開始一分前となった時、特別教室のドアが開いた。
「こんにちは!金森先輩!」
と、俺と同じクラスで、映画研究部のムードメーカー(やま)() (こう)(すけ)が叫ぶ。
いつもこうして挨拶をしているのだ。
そして、先ほどドアを開いて入ってきたのが噂のサボリ癖のある副部長(かな)(もり) (りゅう)
こう見えて、意外に素晴らしい作品を作る・・・らしい。
去年の作品の撮影を行ったのは前部長とこの龍先輩。
殆ど、龍先輩の指示だったという噂だ。
しかし未だに信じられない。
あの、サボリ癖の面倒くさがりやの副部長、龍先輩なのだ。
何故か俺は龍先輩が入ってくるのを目で追ってしまう。
「風紀どうした?何で龍先輩を目で追ってる?」
亮平にそう聞かれて正気に戻る俺。
「いや、あの先輩が・・・とか思って」
「へぇ、そう」
そう言って亮平はまた噂話を始めた。
人の噂・・・亮平のは噂というより事実でしょう。
「そうそう、この学校で同棲している人がいるらしいよ」
そのように俺の耳のなかに亮平の声が入った。
この話はすごく頭に響く。
思わず俺は噴出してしまった。
「・・・ハハハ。まさかな」
「いやいや。これも確かな情報だって!まぁ人物までは突き止めていないけど、
一緒に買い物している姿と、一緒に家の中に入る姿を見た人がいるんだってさぁ。
けど、その人は遠い所から来た人らしくて場所まで覚えていないらしい」
・・・それって明らかに俺達だよな?
ど、どうしよう・・・。
と、言うか遠い所から来た人の話を知っているお前もすごい。
さすがは、噂話、成功確立100%の清水亮平。
侮れない。
「は〜い!部活始めるわよぉ!」
パンパンパンと手を叩きながら大きな声を出す部長。
みんなは『は〜い』と言いながら立ち上がって、前の方に並べられている椅子に座る。
「見たところみんな来ていますね?まぁそれならいいです。今日は、映画を見るので見たい人は残っていってください」
『は〜い』と言って部活終了。
いつも最後まで残って行っているのが部長と、俺達の一つ上の先輩で映画マニアの()(がわ) (みつ)()と、顔は亮平ほどでもないが、かっこいい組に入る、ただ映画が好きな俺らと同じ年の(もり)(した) (ゆう)()
俺も基本的には映画は好きなほうなのだが、明日香が「家に帰る〜!」といつも駄々をこねているので、帰ってしまう。
まぁどっちでもいいんですけどね。
どうせ買い物とかで遅くなるし、普通の下校時間だったら誰かに一緒の家だということがばれてしまうかもしれない。
こういう中途半端な時間だと滅多に人がいないから安心して帰れる。
そして、今日も明日香と帰り道を歩く。
亮平は、電車通学なので俺達とは逆の方向。
俺達からは亮平にばれないようにしたいから都合がいいのかも・・・。
10分ぐらいで家に着く。
時々明日香とは寄り道して帰っているのだが、俺はそういうのが面倒なので寄り道だけはしないように説得している。
しかし、明日香のあの顔と上目使いで一発KO。
仕方がなく一緒についていってしまう。
なんて情けない男だろう・・・俺は。
いつもの通りマンションの4階まで上がっていって家のドアを開ける俺。
家に着いたらまず着替え。
着替えをしないで二人で買い物でも行ったら怪しまれるのは当然ことであって、学校にばれたら大問題。
ここまで心配するのはA型の特徴なのだろうか・・・。
まぁ、明日香はおおざっぱだからO型だろう。
てかのろまそうだからO型決定ね。
「風紀〜!早く買い物行くよ!!」
明日香が俺の部屋の前で大きな声で叫んでる。
そこまで大きな声出さなくても聞えるって・・・!
ガチャっと自分の部屋のドアを開ける。
「じゃあ行こう!」
そう言って明日香は財布(俺の)を持って玄関へと向かう。
「風紀遅い〜!」
手招きして目で「早く!」と訴えている明日香。
「・・・はぁ。はいはい今から行きますよ〜」
そう言って靴を履き外に出る。
いつものコンビへ向かう途中、明日香は何かを思い出したようにハッと頭の上にビックリマークが出た。
「そうそう。友達が家に来たいって言っていたんだけどどうしよう?」
あぁ、、、それね。今日の朝何か言っていたような気もする。
「ん〜・・・どうしましょうかね明日香さん?」
「どうしましょうかね風紀さん?」
二人は歩きながら、考える人のような形をしている。
傍から見たら変な人だろうな〜。と思いつつもこの構え方はやめられない。
やっぱり考えている時=この格好なのだ。
「けどね・・・」
明日香が何か申し訳なさそうにこちらを見ている。
おいおい明日香様。もしや・・・もしや・・・
「友達に家の住所教えちゃったの」
やっぱりかぁ!!
「しかも遊べるよ!って言っちゃったの」
・・・お〜い明日香〜。。。
「今日あの時俺は、『その話は後でいいか?』って聞いた後、大きく頷いたじゃんか!」
「あのときにはもう決まってたり・・・」
じゃあ聞く意味ないじゃん・・・。
しかし、その言葉は俺の心の中に納まった。
それは何故かって?
明日香が今にも泣きそうな顔。そして泣きそうな声で「ごめんね」と言ってくるから。
あの顔は犯罪級だ。間違いない。
そう考えながら頷く俺だった。
けど、どうしよう。
明日香の友達に住所を教えた=俺は友達に住所を教えられない。
ってことにならないか?
俺がもし、住所を誰かに教えてその人が何らかのきっかけで明日香の住所を知ったならば
・・・考えるだけでも怖いな。
「風紀〜?」
明日香の可愛らしい声が聞えてくる。
「な、なに?」
「どうしたの?ボーとして・・・」
駄目だ駄目。いつものように空想世界に入って、我を忘れていた。
「いや、何でもありませんよ?明日香嬢」
笑ってそういうと、明日香も笑ってくれた。
この笑顔が見られるなら何でも騙されそう。
そう思う俺。
完全に明日香の罠にはまっているな・・・。
そうとも思った俺だった。

買い物を済ませ家に帰る。
「うがぁ〜疲れたぁ」
買い物帰りのいつもの言葉を椅子の上で叫ぶ俺。
「今からご飯作るから待っていてねぇ」
エプロンを気ながらそういう明日香は若奥様に見えた。
「様になってるなぁ・・・」
ついつい心の声が漏れてしまった。
「え?秋刀魚になってる!?私が!?」
超慌てて自分の体を確かめる明日香。
あいつはやっぱり・・・馬鹿のようだ。
「秋刀魚じゃない!・・・二度も言うのは恥ずいからもう言わない!」
「なにそれ風紀!意地悪ぅ!!!」
今回ばかり明日香のその顔に、負けてはならない。
俺は目を瞑って心を無にした。
「・・・もういいよぉ。まぁご飯楽しみにしていてね!」
そう言って、台所に戻っていった。
ふ、ふぅ、一件落着。
明日香の顔を見ると首が横に動かないからな。
あの顔で「教えて?」なんて耳元でささやかれたときには・・・。
って俺はなんてエロイ発想をしているんだ!
駄目だ。空想世界へ行ってしまった。
ボーっと明日香を見ながらご飯が出来るのを待っている俺。
この行動は日常茶飯事。
最初は見られるのを恥ずかしがっていた明日香だが、最近ではもう何も言わなくなった。
ご飯が出来、皿に盛って俺のところへ運んできてくれる明日香。
この生活は一般男性なら天国のようなのだろう。
まぁ下心丸見えですけどね。
俺だって女の子の裸に興味がないわけがない。
一応、男だからな。
明日香が可愛すぎて襲いたくなるときもあったさそりゃ。
しかし、女の体に触れたらビクッとしてしまうという一般男性から見てみれば地獄のような体質。
はぁ、何で俺・・・。
箸でご飯を摘み、口の手前まで持ってきてぱくりとする瞬間で俺は空想世界へと行っていたようだ。
「風紀・・・大丈夫?」
明日香が心配そうな目でこちらを見ている。
「だ、大丈夫」
「風紀なんか今日ボーとしてるよね。熱でもあるの?」
そう言って明日香の手が伸びてきた。
俺は思わず後ろへと下がる。
「ど、どうしたのよ!」
「いや、なんでもない」
そう言って俺は定位置へと戻る。
それにしても俺は明日香を避けてしまった。
傷ついたかな・・・?
しかし、俺のその心配も虚しくいつものように自分の料理にベタ惚れしている。
ああ・・・俺の人生どうなるのやら。


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