私が実家に帰ったのは2つ理由があった。
ひとつはお母さんが帰っておいでと言ったから。
もう一つは・・・大和君に会えるかもしれないと思ったから。
その2つ目の大和君になんと出会った。
そのとき心が揺らいだ。
涙が出そうになった。
何も考えられなかった・・・。
私、傷ついているのに。
あなたのせいで。
「や、大和君」
と呟いた私はその後何も出来なかった。
放心状態になった。
誰かが私に「大丈夫か?」と聞いてくる。
大丈夫?
そんなわけが無い。
中3の終わりあんな出来事があったのだから。


私は、2年生の夏休みから付き合っている子がいた。
その子とは幼馴染で、昔から好きだった。
私の初恋はその子で、彼の初恋も私だと言うことが中2の夏知った。
「明日香・・・俺、お前がすきなんだ。付き合ってくれないか?」
その言葉を聞いたとき、私は天まで登りそうなぐらい好きだったのに・・・。
あんなことが起きるなんて。
私達はなんにも危険も無くただ普通に付き合っていた。
しかし中3の終わりごろ、私は大和君に公園に呼び出された。
最近何か変。
それは気付いていた。
だから、今日は気分治しに一緒に喋ろうと思っていたところだ。
公園に着くまでの10分間私はいろんな妄想を広げていた。
何が起こるのかな?
大和君にまた会えるんだなぁって。
けどその思いは公園に着いたとき一瞬にして飛んでいった。
そこにいたのは大和君・・・と女の人。
噂では聞いていた。
一つ上の美人な優しい先輩。
私が来たのを確認すると、大和君とその先輩は手を振ってさよならをしていた。
そのさよならをした後の大和君の顔が悲しそうに見える。
どうしたの・・・?
何でそんな悲しい顔をするの?
彼女が来たというのに・・・。
「よっ明日香」
手を挙げてこっちによってくる。
「やっほ大和君」
3秒ほど沈黙。
「明日香今日は・・・」
その後をなんとなく聞きたくなかった。
「そうそう知ってる?2組のね弥生ちゃんがね、県統一テストでで一番の点数取ったんだって!すごくない?」
私はわざと、大和君の話を止めた。
「へぇ」
「それでね、弥生ちゃんったら・・・」
その後の言葉が出てこなかった。
何故か急に涙が出てきて。
「弥生ちゃんったらね、自慢・・し、してく・・・くるの・・・」
涙が出てまともに喋れないよ。
「明日香・・・」
そう言って大和君は私の頭を自分の胸に引き寄せた。
だけど、私は大和君を突き放してしまう。
「・・・明日香」
何を言われるかは分かっている。
私はうつむいたまま、涙を流している。
「俺、他に好きな人が出来たんだ」
・・・分かってるよ。
分かってるんだよぉ。
「だから俺と」
私は大和君の言葉を遮った。
「嫌!嫌嫌嫌!大和君・・・嫌なの」
涙が止まらない。
「明日香」
「嫌!!」
そのまま私は地面に座ってしまった。
足の力が抜けて立てないのだ。
「ごめん明日香」
大和君の声が聞えてくる。
「私は大和君の事好きなのに!何で・・・何でよぉ」
「明日香・・・俺もお前が好きだけど」
なんでそんなに大和君は私に優しくするの。
ただ・・・ただ辛くなるだけ。
「大和君の馬鹿」
そう言って公園は私の泣き声で埋まっていった。
大和君が近くにいるのはまだ感じる。
人生でこれほど泣いたことはないだろう。
今、天から地面に落ちた・・・気分。
「明日香・・・分かってくれ」
そう言って大和君は私の前に座った。
「明日香・・・」
私の頭を触る。
「何でよぉ・・・」
涙が止まらなかった。
止まるまで家には帰れないと何故か今だけ冷静になっている。
冷静になっているが、涙が止まらない。
今気付いた。
私はここまで好きだった。
大和君はそこまで好きじゃなかった。
・・・そう思って自分を納得させた。
その日以来私は学校へは行かなかった。
大和君と喋りたくなかったし、会いたくも無かった。
受験勉強に集中して、第一希望の遠い学校へ進学した。
そこではある男の子と二人で暮らすことになってしまう。
その人を見るとなんだか落ち着くの。
大和君にどこか雰囲気が似ていて・・・。

そして今日大和君に出会った。
その近くには女の人がいて、何も出来なかった。
本当に会いたかった。
だけど、大和君の幸せを邪魔したくなかった。
「ん?その人、新しい彼氏?」 って聞かれたときは少し悲しかった。
平然とした顔でそのことを言うから。
悔しくて本当は彼氏じゃないのに「そ、そう・・・だから近寄らないで!」と言ってしまった。
その後、落ち着きたくて風紀の服をつかんだ。
・・・落ち着く。
「そうか。元彼の俺が出る幕じゃなさそうだな。また、会えたら会えたで話してくれよな!」 と言って大和君は彼女の元へ戻って行った。
涙が出そうになった。
だけど堪えた。
ここで泣いて、まだ心残りがあるなんて大和君に知ったら・・・。
我慢して、我慢して、やっと家に着いて自分の部屋で泣き崩れた。
3人は雰囲気を察してか、私の部屋に入ろうとはしなかった。
あり難い。
どうしようもなく一人になりたかった。


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