「こんにちは」
ある男が道にさまよっているようだ。
そこに可愛い女の子が親切に話しかける。
「こんにちは。ここってここですよね?」
男は話しかけてくれた女の子に地図を広げ聞いた。
「そうですよ」
可愛い笑みを作って返事をしてくれる。
その後ろで、気の強そうな女が
「じゃあここらへんだよね?」
と、答えた。

「は〜いよく出来ました〜」
部長がパンパンパンと手を叩きながら言う。
そして、さっきのは映画のワンシーン。
皆が一通りしているのだ。
因みに、親切な女の子が明日香。
男の子は亮平で、気の強そうな女の子が五十鈴。
俺はこいつらの前に一度、由美先輩と部長とで演じた。
だけど俺は気の強そうな女の子役。
何故・・・?
「明日香ちゃんと亮平君と五十鈴ちゃんやっぱうまいねぇ」
マジで褒めている部長。
俺には何にも言っていなかったくせに・・・。
「じゃあ次は、悠太君と静香ちゃんと私でやろうかしら」
ウフフと言いながら部長は演技をする場所に入った。
俺はあれ以来出番が無い。
明日香と亮平等は結構しているのにな。 俺は演技をする場所から少し離れた場所で眺めている。
その後、俺は最後の最後に演技することができた。
はっきり言って人前でやるのは恥ずかしい。
何で皆あんなにも冷静で出来るのだろうか?
部活が終わる少し前。
「どうみんな?大体こんな感じで進めていくから」
部長が皆を椅子に座らせて教団の前に立つ。
「明後日の部活までには私達が決めておくから、希望があったら今日言ってね?」
ニコッと笑って今日は部活終了。
部長が「解散!」といった瞬間に2年生が部長の前に出て行った。
それに続いて幸助、五十鈴、静香、亮平、明日香が部長の前に。
何故か俺は一人残された。
すると、横から声が聞えた。
「一人じゃないけどな」
龍先輩だ。てか勝手に人の心読まないでください!
「いやいや大体お前の考えてそうな事が分かる」
・・・また勝手に読んでいる。
「龍先輩は言いに行かないんですか?」
「俺は適当なやつでいいから。3年生は絶対主役にはならないしな」
「へぇ〜3年生は・・・って、え!!!」
つぅことは俺が主役に?
そんな訳ないか。
目立ちたがりな幸助か亮平が主な役でしょう。
それで去年のエースといわれていた由美さんがヒロインでしょうね。
「まぁ由美はヒロインじゃないだろうな」
・・・もうつっこみきれないです。
「何でですか?」
「だってあいつ。主役は絶対ヤダ!って去年泣きながら前の部長に頼んでいたからなぁ・・・」
「へぇ〜」
じゃあ・・・明日香か五十鈴だろうな。
静香はまぁ大体あの役でしょう。
「お前行かなくてよかったのか?」
みんなの役を考えていると幸助が喋ってきた。
「俺?俺は適当な役でいいから。特にしたいのも無いし」
「お前馬鹿?当たり前のように最終的に残るのが主役だって」
「・・・」
「・・・」
「へ?マジ?」
「マジ」
ズゴーーーン!!! 頭の中の隕石が落ちた。
「おい大丈夫か風紀?なんかすごい音がしたぞ?」
俺もすぐさま部長の下に駆け寄った。
「ぶ、部長!」
「何?主役の風紀君」
「・・・」
「何よ?」
「マジっすか?」
「マジっすよ」
ズドドドーン!!!!
「あらら」
「冗談じゃないですよ!何で俺が主役?てか俺に主役は無理です!亮平の方がいいと思います!てかあいつにしちゃってください!」
もう土下座気味の俺。
傍から見たら情けない男なんだろうな。
それでもいい。俺は情けない男だ。
「因みにヒロインが明日香ちゃんだから・・・。はぁ」
何で明日香!?てか最後の溜息は何!?
「明日香ちゃんが可愛そう」
あら、そういうことですか。
「明日香、よくヒロインがしたいって言ったな」
「明日香ちゃんが女子の中で一番遅かったからね。しょうがないのよ」
「・・・何!?」
思わず、特別教室の中に山彦ができる程の声を出してしまった。
俺たちの帰り道。
「はぁ」
「はぁ」
俺たちの溜息は止まない。
太陽の光に照らされ、俺たちは買い物へ行く。
誰もが見ても落ちこぼれたカップルに見えるんでしょう。
カップルじゃないんですけど。
「何で私がヒロイン」
そう呟く明日香。
まだ、明日香がヒロインなら分かる。
学校一の可愛さだからな。
考えられないのは俺だ。
主役!?
考えられない。
あんなにカッコイイ亮平や、悠太、龍先輩が居るというのに、何でよりにもよってこんな俺が・・・。
家に帰ってからも俺たちの溜息は止まなかった。
明日香の、「溜息をしたら幸せが逃げていくよ?」の言葉が分かったような気がする。
幸せが逃げていくというより、苦難が近寄ってきたのかもしれないが・・・。
明後日になって、役の人が発表された。
・・・。
案の定俺は主役、明日香はヒロインだ。
亮平は俺の友達役みたいな感じで、部長はやっぱり自分の言っていた役になっていた。
俺の夏休み。
大丈夫なのだろうか?
・・・はぁ。
また大きく溜息をついた俺だった。



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