・・・。
落ち着け俺。
大丈夫。
いつも通りすれば、大丈夫。
緊張なんか無い。
そう、緊張なんか・・・。
「はぁ・・・風紀。何回ミスってるんだよ」
龍先輩がカメラを回しながら呆れた風に言った。
何も言い返せない俺も馬鹿みたい。
「・・・まぁ。最初だしな、誰でも緊張するだろう」
うんうんと頷きながら言う龍先輩はどこか自分に言い聞かせているようだった。
「テイク9・・・スタート」
俺は一生懸命演技に入る。
今、出ているのは俺と、静香と、亮平。
「は〜いOK!」 ふぅ・・・。
やっと俺の出番が終わった。
「じゃあ次は、明日香ちゃんと、静香ちゃんと、亮平と、風紀だね」
・・・またか。
もう主役なんて嫌だ!
心の中で叫ぶ。
その叫びも虚しく、もうすぐ始まる。
今度は明日香と俺が話すシーン。
近くで見ると余計綺麗だな。
「おい風紀、見とれてんじゃねぇぞ」
龍先輩の檄が飛ぶ。
「は〜い」
「じゃあ、スタート!」
カメラがまわりだした。
俺たちの合宿は、7日間。
今日は2日目。
2日目に撮る予定だったシーンは全て撮り終えた。
3日目と4日目とも順調に撮影が進んだ。
・・・事件は
5日目に起きた。
「風紀〜」
「ん?」
「なんか風が強まってきたね」
「そうだな」
AM9時。
俺と明日香は、下でゆっくりとしている。
ここに来たのは203に女子が割り込んできたからだ。
部長と由美先輩。それに続いて、妹の静香も一緒に来て、寂しくなるのが嫌だからと五十鈴と明日香も一緒にやってきた。
最初の5分は我慢できた。
しかし、部長が変な事を言い出すまでは。
「今日どうせ、12時集合だから何かゲームしましょう!」
・・・俺、逃走。
ゲームなんてまっぴらだ。
明日香は俺を心配したのか探しに来てくれた。
そして、今に至る。
「今日の撮影どうなるんだろうね」
「さぁ?これぐらいの風ならするんじゃねぇ?」
「そうかなぁ?」
ガタガタと硝子が靡いている。
やはり、明日香も女の子。
こういうことは怖いのだ。
顔がこわばっている。
「大丈夫だって」
俺は笑みを作って明日香に言った。
「そ、そうだよね」
とは言った物の、やはり怖がっている。
俺にできることはないが、そっと「明日香」と呼んで微笑んでやった。
その後の会話が続く。
「ラブラブだねぇ」
後ろから亮平の声がした。
「う・・・。お前は何してんだよ」
「俺?俺は上が暇だからさぁ、こっちの方が面白そうだったし」
「ふ〜ん」とだけ言っておいた。
「それにしても・・・」
亮平は外を見た。
一応亮平も気にしているらしい。
映画の撮影も詰め詰めの状態。
一日も有余がないのだ。
「まぁ、これくらいの風なら」
亮平も俺と同じ考えのようだ。
なんだかんだ言って、11時まで話していた。
約2時間、下に居たのだ。
11時になると上に行って、着替えを済ます。
ここまでの行動はもう3日やっているの部長に言われ無くても行動に移せる。
今日の服はいつもと同様、今時の服。
こんなお金何処から出ているのだろうか?
やっぱ学校だよな。
それとも部長の自腹?
・・・それはないな。
まぁ深く考えると埒が明かないから考えるのはよしとこう。
無言で俺は頷く。
その様子を部屋の皆さんは不思議そうに見ていた。
12時になり、下に集まる。
さっきより風が収まっている。
俺たちより先に女子が着いていた。
「遅いわよ男子!」
龍先輩は「ごめんごめん」と言って部長に謝っていた。
明日香の姿。
今日も可愛らしい。
・・・。
明日香と目が合った。
すると明日香はにこっと笑う。
部長に呼ばれたのか、部長の方をぱっと見て話をしだした。
今日は明日香と二人で写るシーンがあるらしい。
あの海の場所で。
俺たちが見つけたあの場所で。



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