ピンポーン。 9月1日。 朝、7時。 今日から学校というのに、朝早くから家のインターフォンが鳴っている。 明日香の声はいまだ聞えてこない。 布団の中で今、出来る限りの頭を働かせる。 え〜と誰? え〜とどうしよう? まぁ・・・。 「無視決定」 そう呟いて頭の回転を止めた。 しばらくすると、明日香のいつもの声が聞えてくる。 「風紀〜朝だよ!」 いつもと同じ時間。いつも通り、ドアを開く。 ただ一つ違うのが、 「おはよう明日香。と・・・亮平?」 「おう。亮平だ」 「りょ、亮平か」 ・・・なんだよ? 何で亮平がいるんだよ? 「羨ましいぞ。風紀」 亮平はそう言い、俺の視界から消えた。 「どうしたの風紀?」 明日香が心配そうな顔をして、俺を見ている。 「・・・幻か?」 一応、決まり文句のその言葉を発しておいた。 着替えも終わり、学校に行く準備を鞄に詰めると、俺は部屋を出ていつも通りご飯を食べに行く。 当たり前のように、幻なんかじゃなくて本当に亮平はいた。 明日香の手料理もいつもより一品多い。 あの優しい明日香のことだから、亮平の為に作ったのだろう。 フッ。 それが亮平を調子に乗らせることも知らないで。 これがきっかけとなり、亮平は毎日のように食べに来るだろうな。 俺は無言で席に着き、明日香の到着を待つ。 明日香も準備が終わったようで、いつも通りの席に着いた。 「「「いただきます」」」 3人の声が綺麗にそろった。 パクパクと箸が進む。 亮平はいつものようにぺちゃくちゃ喋りながらご飯。 明日香は、人を無視できないたちなのか、亮平の言葉にも反応をする。 亮平がここに来たのは何らかの理由があるのだろう。 ただ、邪魔をしに来てだけとかなら抹殺決定だ。 一度箸を止め、右手を机の下に隠す。 そして、抹殺準備OK。 本題に差し掛かる。 「亮平。何のために家に来た?」 「・・・それ」 「・・・なんだよ?」 「それを言いに来たんだよ!・・・ 右手に準備をしていた抹殺を解除した。 「・・・。」 「どうすんだよ風紀?」 「・・・どうするって」 「お前には隠していたが、智也とはお前と終わったときに別れたらしいぞ」 知ってるよそれぐらい。 何で今頃・・・凛が。 そう、 「いや、まだ分からないんだ」 亮平がボソという。 「どういうことだよ?」 「実は名前しか分かっていないんだ」 「そうか」 「同じ名前はこの世に五万と居るはず。あの凛じゃない可能性もあるんだ」 「そうか」 「風紀。そこは突っ込む所だぞ」 「・・・ごめんごめん。同じ名前の人がこの世に5万といたら怖いです」 「はい。よろしい」 俺は、箸を取り食事に戻る。 「風紀・・・けどもしあの凛なら・・・」 俺は思いっきり机を叩いた。 「亮平!その話はやめろ。明日香の前だぞ」 明日香がさっきから口の前で箸がとまった状態になっている。 「ごめん」 亮平がそう言って、重苦しい空気の中、俺の目の前においてある明日香の手料理は徐々に減って行った。 あの凛が転入してくる。 この時期に? まだ高校入って間もないじゃないか。 何故、転入? 明日香と亮平と同じスピードで歩く。 学校に向かっている最中、誰一人として喋ろうとはしなかった。 俺は、明日香に話していない。 凛が原因で女性恐怖症になっていることを。 明日香に言うと、明日香が俺を心配して家を出て行くかと思ったからだ。 ・・・それは嫌なんだ。 何故か分からないが嫌なんだ。 俺の生活には、もう必要な人物になっている。 8時40分から始まる学校に8時7分に着いた。 凛とは会いたくない。 せめて、違うクラスに・・・。 いや、まず凛ではないことを願おう。 あいつの顔を見ると駄目なんだ。 涙が出てくるんだ。 声が出ないんだ。 実際、明日香が凛の雰囲気に似ていたから喋れた。 ・・・けど、実際の凛には声さえかけられないし、顔も見れない。 自分の席に座る。 明日香は俺の席の隣。 二人だけ・・・この教室に今居る。 「風紀?」 心配そうな声を出して、明日香は俺に話しかけてきた。 「どうした?」 いつもの顔に戻り、明日香に返事する。 「・・・何にもない」 明日香はそういい、また口を閉じた。 ガラッとドアが開く音がした。 担任の 俺はすぐさま立ち上がり、教室から姿を消した。 後ろの方にある教室からは 「今日から貴方は、ここで勉強するのよ」 そう聞えてきた。 俺は・・・今にも涙が出そうだった。 フラッシュバック。 頭の中で中学の時、凛の携帯を見た瞬間の凛の顔を思い出している。 吐き気、頭痛、腹痛。 いろんな症状が一気に、俺にのしかかってきた。 ・・・保健室へ行こう。 俺は一歩一歩、階段を下りていく。 一階にある保健室へと足を進ませた。 ←戻る TOP 進む→ |
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