部活もいつも通り過ぎていった。
何事もなく、過ぎていった。
いつもの映画鑑賞もいつものように見ずに帰ろうとしていた。
「風紀〜!早く」
明日香の声が下駄箱の方面から聞えてくる。
「忘れ物した!先・・・行ってて」
今、出来るだけの声で明日香に返事した。
「わかった〜」
明日香は俺が今、ある事件に巻き込まれていることは知らないだろう。
「風紀・・・」
凛の声が俺の前方から聞えてきた。


部活が終わり、俺は明日香と帰るため、特別等の前で明日香の帰る準備が終わるのを待っていた。
しばらくすると、横から聞き覚えのある声が耳に入ったのだ。
「風紀、下で待ってるから」
と。
その声は確かに、凛の声だった。
幻か?と思ったのだが、実際明日香と一緒に下に行ってみると凛がいた。
その場で止まってしまった俺。
明日香は、俺が止まっていることに気付かず歩いて行った。


「なんだよ凛」
ここで決着をつけなくてはいけない。
あの日の思い出と。
この気持ちと。
吐き気もする。
鳥肌も立っている。
死ぬほど、怖い。
「私ね・・・あの時の事後悔してるんだ」
・・・何が言いたいんだよ凛は。
「俺は、もう未練はないから」
そう言って、その場を立ち去ろうとした。
「私は!」
凛の大きな声が俺の耳に届いた。
「私は・・・まだ・・・」
まだ?
何なんだよ。
お前は、智也が好きで、俺のことはどうでも良くてあんな事をしたのだろう。
分かってるよそれぐらい。
だから、俺はお前らを邪魔しないように今まで過ごしてきたんじゃないか。
なのに、智也とあの後別れて。
意味わかんねぇよ。
「まだ・・・好きなの」
誰をだよ。
智也だろ?
俺じゃないだろ?
無言の時間が続いた。
「まだ、風紀のことがすきなの!」
・・・。
俺は、もう・・・。
好きじゃない。
「だから、どうした」
冷たく言い放った。
「だから・・・私ともう一度・・・」
「・・・。」
「付き合って欲しいの」
付き合う?
俺とお前がか?
一度、あんな裏切りをやられて、俺がもう一度お前と付き合うだと?
「ふざけんな」
「ふざけてなんかない!私はまだ風紀のことが好きなの!」
あのときの残酷な風景が思い浮かんでくる。
もう、あんな思いはしたくない。
お前とも会いたくなかった。
心が・・・痛んだ。
「風紀!!!!」
遠くの方から、明日香の声がする。
「風紀!!!!」
ほら、また明日香の声が。
バンっと体に衝撃が走る。
「・・・明日香ぁ!?」
衝撃の5秒後に俺はそう言った。
そのときに、抱きつかられていることに気づく。
頭がくらくらする。
必死に俺は明日香の体を俺から離した。
「どうしたんだよ?」
明日香を離した後に俺は言った。
泣きながら、首を横に振る明日香。
何で、この状況で俺に抱きついたんだお前は。
「す・・・す・・・す・・・」
・・・す?
「すっごいよ!下駄箱の中に、変なのが入ってるのぉ!!!すっごい怖いんだから!」
・・・は?
「ねぇねぇ!来て!これ、やばいって!」
そう言いながら、また明日香は俺の手に触れる。
グヒョ。
明日香に触れられていることを我慢しながら、明日香の下駄箱の前まで連れて行かれた。
「・・・なんだコレ」
明日香が驚くのも無理は無い。
男性からと思われる手紙が、下駄箱の外にまで漏れ出しているのだ。
「いつもこんなんなのか?」
明日香は一生懸命首を横に振る。
「いつもはもっと少ないよ!!!」
もっと少ない=いつも入ってるのか。
「お前、可愛いからな。しょうがないよ」
すると、横からボン!と何かが破裂した音が聞えた。
それは、明日香方面であり、その明日香本人なのだ。
「どうした?」
顔が真っ赤になっている。
「・・・まさか照れてるんじゃないよな?」
さっきより、明日香の顔が赤くなった。
クククク。
これは面白いな。
「風紀・・・」
後ろのほうから声が掛かった。
「何?」
と言いながら勢いよく後ろを向く。
・・・凛。
やっべ。存在を忘れてた。
「諦めないから!」
そう言って、凛はその場から立ち去っていった。
その凛の姿を明日香が見ると、「どうしたの?」って聞いてきた。
俺は笑顔で「何も」と答えておいた。



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