大変な事になった。 本当に、大変な事になった。 いつもなら、亮平、幸助と共に優雅な昼休みを過ごすのに、今日は一段と大変だ。 何で、こいつがこんなに言い寄ってくるんだ。 しかも、キャラが変わりやがった。 ・・・女難。 また始まりやがったか。この野郎。 何で神様は俺に意地悪をするのですか! 「ねぇねぇ風紀〜」 鳥肌が立つのは変わらない。 「どう?それ美味しい?」 吐き気がするのも変わらない。 「まぁ」 冷たく接する俺の態度も変わらない。 「風紀!あ〜ん」 凛が俺の手元にある弁当から玉子焼きを取り出し、俺の口元まで持ってくる。 「だから、やめろって凛!もう、中学時代じゃないんだよ!」 シ〜ンと静まりながら、先ほどから皆が俺を見てくる。 く・・・この視線は痛いぜ。ガッツ隊長。 『ガッツ隊長って誰だよ!』と、この状況でも自分に突っ込みを入れている俺。 「中学の時は、嫌がらずしてくれたのにぃ!!」 凛。お前には罪悪感というものが無いのか? 「だから、中学と今は違うって!」 「でも、私は今でも風紀のことが好きだよ!」 ・・・。 寒気倍増。 「俺は好きじゃない」 はぁ・・・さっきからこの言葉を何度言ったことか。 もてる男は辛いってこのことか? 俺と、凛以外に食事をしている奴は見当たらない。 弁当は出ているのに、何故皆食べないのだ。 てか、食う寸前で止まっている幸助・・・何者だ? 「せっかく私が作ってきたのにぃ!」 ・・・。 雰囲気は明日香に似ているんだけどな。 あの明日香でさえ、食べるのを躊躇している。 「あぁあぁ美味しいよ。うんうん美味しい。だから、あ〜んとかはやめろ」 「は〜い」 本当に分かってるのか?こいつは。 「分かったから。あ〜ん」 今度はミニトマトを俺の口元まで持ってくる。 「だから!やめろって!!!」 はぁ・・・。 俺は凛が俺のために持ってきた弁当ではなくて、自分の弁当を手に持ち、その場から脱走する。 別に、教室で食わなければならないという校則はないのだ。 その後ろを凛がついてくる。 だが、しか〜し! ある作戦があるのだ。 見てろよ凛。 ・・・別に見なくてもいいけど。 俺はもう一度自分の教室に入った。 その後ろを凛がついてくる。 入ってくるのと同時に、逆の方のドアから出た。 まぁここで凛は少し迷うだろう。 そのっまダッシュで3組へ。 そのまま身を潜めて、凛が探し終えるのを待つ。 ・・・。 ・・・。 ・・・。 逃げ切り成功。 2組に戻るのは危ないな。 3組で食事を済ますか。 確か、3組って言ったら五十鈴がいたっけ? 俺は五十鈴を探すため、周りを見渡す。 「・・・発見」 できるだけ小さな声で言った。 五十鈴は・・・ん? 一緒に食べていた女の子とばいばいしているようだ。 弁当を食べきったのか? 俺に近づいてきてる。 「やっほ。風紀君」 「おう。五十鈴」 「どうしたの?こんな所に一人で」 「いや、2組で色々と会ってな。五十鈴と一緒に弁当をと」 見つめ合う俺たち。 「罰ゲームじゃないよね?」 「勿論違う」 「じゃあ食べよう!」 五十鈴は俺の隣に座った。 俺も座る。 「ねぇねぇ。2組の木村さんって風紀君の元彼女なの?」 ・・・。 何処までその話は届いてるんだ。 俺は無言で頷く。 右手で持った箸で玉子焼きを突く。 そして、一口でパクリと食べた。 「五十鈴も元カレとかいるだろ?」 「う・・・うん」 誰もが、昔の恋は嫌なのか? 五十鈴の顔が一瞬曇った感じに見えた。 その後も、パクパクと箸が進み、口も進み、楽しい昼食となったのだ。 食べ終わり、2組へと戻る。 ドアをガラッと開けた瞬間、全員が俺の方を向いた。 この視線、何時になっても嫌いだ。 しかし、その視線はなぜかいつも違う。 ある一部の男共の目に、炎が満ち溢れていたのだ。 ・・・何かありましたか? 俺はそういわんばかりの顔で、自分の机に戻る。 すると、先ほどの男共が俺の机を囲んだ。 怖いっすよ。 しかも、知らぬ顔ばかりだ。 ・・・2組の野郎はいないらしい。 その中のリーダー的存在の男がこういった。 「ちょっと、顔かせや」 「・・・。この顔、取り外しできないんですけど」 少し冗談で言ってみる。 「なめとるんかお前は」 「いえいえ」 挑発はしないで置こう。 言われるままに、俺はその集団についていった。 嫌だなぁ。 着いた場所は喧嘩の名場面、体育館の裏! 先ほどのリーダー的存在の男が俺に一歩一歩近づいてきた。 「お前、しゃしゃってるんじゃねぇよ」 ・・・は? しゃしゃってるって何語だよ。 「そんなに女にもてたいかよ。その態度がむかつくんだよ。あぁ?」 よく、女の子が格好いいこと付き合って嫌がらせされるというパターンに似てないでしょうか? こんなこと、男にでもあるんだな。 「なんで、てめぇが明日香ちゃんと凛ちゃんと一緒にいるんだよ」 ・・・知るか。 「もうあの子らに近寄るなよ?」 ・・・うぜぇ。 「何でだよ?お前、自分がもてない事の腹癒せか?バカだな」 「あぁ?なんだと!そんなに分かんないんだったら、身体で分からせてやるよ。やれ!」 そのリーダー的存在の奴が子分の様なやつらに言った。 「やれやれ、あんまり荒いことはしたくないんだが。痛いのは嫌だしな。仕方ない」 襲い掛かってきたのは4人。 綺麗に、横に並んで俺を殴りに掛かってきた。 まず、一歩下がり、間合いを取る。 右手で、右から二番目の男を殴った。 バコン! *注意* ここからは見るも無残な光景なので、音だけでお楽しみください。 バン! 「う・・・」 ズゴン! 「あう」 ビシビシズズゴゴゴゴゴーン! 「うわ・・・」 「おえぇぇ!」 ドカ! バシ!ドカン! 「う・・う・・・」 バン! 俺は4人を瞬殺し、残る一人のリーダー的存在のやつに近寄る。 「ねぇ?俺ってもてないよ?」 俺は綺麗な笑顔を作った。 「・・・は、はい」 「じゃあ・・・この事いったら殺すよ?」 「は、は、はい」 「他の人にも言っといてね」 「は・・・はい」 「じゃあね?」 「は、は・・・はい」 バゴーーン。 失神。 俺は乱れた服装を直した。 よし、戻るか。 俺は一歩、一歩戻って行った。 ←戻る TOP 進む→ |
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