教室のドアをガラッと開ける。
先ほどと同じように、俺にみんなの視線が集まる。
だから、この視線嫌いなんだって。
「ぅ〜」と言い、下を向きながら自分の席へ向かった。
まだ、視線が俺にきているのがわかる。
そんなに珍しいか?
この俺が。
教室にドアを開けて入ってくる奴が。
だったらどう入るんだよ・・・。
・・・視線。視線。視線。視線。
だからそんなに見るな。
自分の席へと戻ると幸助が俺の前にやってきた。
すると、俺の顔をじっと見てこう言った。
「お前、大丈夫か?」
「何が?」
「何が?って分かってないの?」
・・・は?
だから早く俺に用件を言え。
「お前を呼んださっきの人、2年生で最強と呼ばれている男の人だったりするんだよ?」
・・・?
あぁあいつか。
相当弱いのに、あいつが最強とは・・・。
この世の中も終わってたりするんだな。
「へぇ〜」とだけ答えていた。
幸助が俺の元から去っていくときに「無傷かよ」と呟いていった。
―――――放課後。
「風紀〜帰ろうよぉ!」
そう呟いているのは、勿論凛である。
「俺、部活あるから」
凛にそう言った後、俺は明日香を見つけ、そばに寄った。
「風紀、今日大丈夫だった?」が、明日香の第一声。
「・・・まぁ」
明日香は、前に俺の喧嘩を見ている。
それほど心配していないらしい。
その話もその時点で終わった。
特別教室へと向かう。
まぁ、簡単に言うと部活へと向かう。
「こんにちは〜」
いつものようにガラッとドアを開けた。
・・・。
「ど、どうしたんですか?」
俺がそう言ったのは、まぎれもなく俺に全員の視線が集中しているからだ。
「お前、あの最強の男やっつけたのか?」
いつも遅い龍先輩が珍しく早く居る。
・・・いや!驚くべき所はそこじゃない!!!
「・・・え?」
何で知っているんですか?
「今、何で知っているんですか?とか思ったろ」
・・・う。
言い返せない。
「幸助が、みんなに言っているよ」
あいつか。
幸助を0.2秒で探し、呼び出す。
「おい、幸助。カモン」
「あ、あい」
幸助は怪獣を見たかのような顔をしながら俺に近づいてきた。
まぁ実際にその顔を見たこと無いんだけど。
その前に、怪獣を見たことはないし・・・。
「な、なんですか?」
何故か敬語。
「お前に言いたいことがある。ちょっと来いよ」
そう言い、俺は廊下に呼び出した。
「いやぁぁぁぁ!」
何か悪魔を見たかのような悲鳴をあげる幸助。
まぁ俺は・・・いや、話が長くなるからやめておこう。
強制的に廊下へと引っ張り出す。
「ねぇねぇ幸助君。そのことはもう話しちゃ駄目よ?」
一応笑顔で幸助に言う。
幸助はビビッて、俺の顔を見ることも出来ない様子。
「分かったら返事」
少し、冷たく言う。
「は、はい!」
・・・。
なんかそこまで怖がられると俺も嫌なんですけど。
まぁ・・・これもこれでいっか。
笑顔で幸助の顔を見て俺だけ教室に入る。
またもやみんなの視線が俺に集中。
やめてくださいよ・・・。
「こ、幸助は?」
悠太が俺の顔を見てそう言った。
まぁ怖がられるのも無理ないのかな?
「あぁ外で魂放浪している」
意味不明な言葉を悠太に返すと、へ?みたいな顔を作っている。
いつも悪ふざけの挨拶をしてくる部長はというと・・・。
「おい!馬鹿風紀!そんなことして、お前が退学になってみろ。続きが撮れないだろうが!」
俺の身体をバシバシ近くに置いてある金属バットで殴ってきた。
・・・部長。
何でそんなものがあるのですか!?
意識朦朧としながらもそんなことを考えていた。


「ふ・・・き?」
何処からか明日香の声が聞えてくる。
「風紀・・・風紀・・・」
しっかりと聞えてきた。
目をばっとあける。
視界には四角の模様がいっぱい並んでいる。
まぁこの風景。
「保健室か」
大きな溜息を着いた俺。
「風紀・・・」
横で寝息が聞える。
「明日香。待ってるならちゃんと起きてろよな」
自分の体を起こす。
う・・・。
ちくっとする痛みが全身に走った。
「スースースー」
しかし、その痛みは一瞬。
明日香の方を見ると「可愛い顔してやがる」とうっかり呟いてしまう俺。
「明日香・・・起きろ」
耳元でそっと呟いてみる。
「ん・・・あと少し時間ちょうだいよぉ」
寝言なのか、本当に言っているのかよく分からない言葉が返ってきた。
「そんな返事いらねぇ」
笑いをしっかり堪えてそう言った。
その言葉に反応したのか、明日香がむくっと起きて目を擦り始めた。
「ん・・・風紀?」
「あぁ俺、風紀」
「だ、大丈夫なの!?」
「何が?」
そう答えた後、明日香は細かく教えてくれた。
俺が気絶したときのことを。
簡単に説明すると、部長が遊び半分で、金属バットで俺を殴っていたところ、明日香が止めに入って俺は気絶したらしい。
・・・もっと簡単に言うと、俺は明日香に抱きつかれて気絶したことになる。
恥ずかしい。
「明日香。帰るか」
大きく明日香は頷いた。
ぐ・・・まぶしいぜ明日香。
その姿が、憎い位に可愛い。
「クソ〜〜〜!」
無意味に保健室で叫ぶ。
明日香は不思議そうな顔をしていたけど、俺はその顔を無視することにした。



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