明日香が大分遅れて、俺たちのところへやってきた。
その足取りは重く、今にも倒れてしまうのではないかというぐらいに・・・。
「だ、大丈夫か明日香!?」
俺は明日香に駆け寄る。
「う・・・うん」
言葉に力が無い。
「そ、そうか」
抱き寄せることも出来ない俺。
「ちょっと、あそこで休もう」
俺はそういい、ベンチに座らした。
明日香はここまで走ってきたのだろう。
置いてくるんじゃなかったな。
30秒後。
「もう大丈夫!」
すくっと立って、元気をアピールする明日香。
まぶしすぎる・・・。
俺と明日香は凛の所へ。
・・・。
やはり、凛の手の中にはメイド服が。
信じがたいが、これが真実なんだろう。
すると、俺の頭にある提案が。
「なぁ、明日香。それ一回着てみろよ」
冗談交じりで言ってみる。
「うん!!わかったぁ!」
よかった、よかった分かったか。
・・・え? 本当に着るのかよ。
そのまま、明日香は試着室に入って行った。
数分後。
「ジャ〜ン!」
と言いながら、試着室のカーテンを開ける。
俺の目に飛び込んできたのは、
藍色のひらひらスカートの下に白く、細い足があり、猫耳をつけて秋葉系が見たら鼻血を出すような顔立ち。
俺は、自ら固まっていることに気が付く。
「あ・・・ぅ・・・え・・・と」
何を言いたいんだ俺!
何をするでもなく、俺は俯いた。
「ど、どうしたの風紀ぃ?」
凛の心配する声が聞えてくる。
「な、なんでもない」
なんでもないこと無いのに、そんなことを言っている俺。
そして、顔を上げると明日香の猫耳メイド姿が。
「どうかな?」
と言いながら、明日香はくるくる回っている。
率直な感想は、やばいですよ?
「い、いいんじゃない?」
周りの視線が気になるのは・・・気にしないでおこう。
「じゃあ、私も着るぅ!」
そう言って、凛は猫耳と、メイド服を持って試着室に入った。
いやいや、もういいですから。
これ以上は耐えられません!
理性を保ちつつ、待つこと2分。
勢いよく、試着室のカーテンが開き、凛が出てきた。
・・・。
KO
その場で意識が朦朧とした俺だった。
「だ、大丈夫?」
明日香が俺に近寄ってくる。
「む、無理!」
意味不明な言葉を俺は言う。
「な、何が!?」
明日香がそう聞いてきた。
まぁ、当たり前の返事なのだけど、俺の思考は今ぐっちゃぐちゃ。
何を言っているのか分からない。
「お、お前等!まず、着替えろ!」
そう言って、その場を逃走した俺だった。
5分後、通常理性を取り戻して、あの地獄の間に戻る。
戻ってみると、明日香と凛は私服にちゃんと戻っていた。
「よ、よし。会計するか」
猫耳18個、メイド服18着を会計所に持っていく。
当たり前のように、店員に変な目で見られ、恥ずかしい思い。
糞。
何で、俺がこんな恥ずかしい思いしなければ。
涙目の俺に店員は気付いたのだろう。
会計は10秒ほどで終わった。
会計を終わらして、明日香たちが待つ所へ行こうとする。
「はやくぅ!」と言う凛。
「風紀〜!」と呼ぶ明日香。
俺は駆け足で明日香たちが待つ場所に行った。
「次は、細長い紙を大量、メニューが載るような紙を大量か」
まぁ、簡単に見つかりそうな物だな。
いや、メイド服も簡単に見つかったといってもいいだろう。
探し続けること15分。
・・・無いぞ?
何で〜?
1階から7階まであるここに、何故雑貨屋がないんだ?
可笑しいだろ?
一度、1階まで降りてみることにした俺は、あることに気づいた。
・・・地下1階。
エレベーターの横に、ひっそりと書かれていたのだ。
ひっそりと書く理由は、俺にも分からない。
だが、あきらかに地下1階の隣に雑貨屋と書いてあるのだ。
苦労の15分間はなんだったんだ?
「風紀あったよぉ!」と凛が叫ぶ。
その発声は、俺がひっそりと地下1階と書いてあったのを見つけてから30秒ほど経ってからだった。
エレベーターで地下1階まで降りる。
その途中、窓ガラスになっているエレベーターではしゃいでいる二人。
はぁ〜と溜息をついたせいか、エレベーターの動きが変な風になった。
いや、止まった。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「「「え〜!」」」
3人の声が重なる。
「と、止まったよね!?」
と言ったのは凛。
一番焦っているように見える。
「うんうん!」
と言っているのは明日香。凛の次に焦っていると見られる。
生憎、他の乗客者は居なくて、俺たち3人だけ。
俺は、冷静を取り戻して、エレベーターにある非常用のボタンに手を掛けた瞬間。
ガタン!と言い出してエレベーターが動き始めた。
「「「へ?」」」
と、またもや3人の声が重なった。
地下1階に行くと、何事もなかったような行動をするお客様と店員。
いや、何かがあったことを知らないのだろう。
明日香と凛も、先ほどの出来事を忘れたかのように行動している。
どうなってるんだぁ!
と、心の中で叫ぶ。
しかし、その心の叫びは無情にも誰の心に響かなかった。
「風紀ぃぃぃ!」
メイド服の時と同様、遠く離れた所にいる凛が俺を呼ぶ。
しかし、同じ過ちは二度とやらないのが俺。
今度は明日香と一緒に凛の待つ場所へと向かった。
今度は驚かない。と心に誓っていたのに・・・。
如何にも、メニュー用です!と、言わんばかりのものがある。
それに続いて、如何にも、注文を取る紙です!と言わんばかりの紙もある。
「・・・」
またもや驚いてしまった自分が情けなくて、涙目が倍増した。



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