「いらっしゃいませぇ〜」
1年2組の皆様の声が重なる。
約40人の1年2組は半分、半分で仕事をこなしている。
因みに、俺と、明日香と、凛と、幸助と、沙希は同じグループ。
そして、今は文化祭なのだ。
俺たちの文化祭は全部で4日。
木、金、土、日曜日と休日が二日も入っているというこの悪状況。
そのおかげか、次の週の月、火、水曜日が休みなのである。
そして今日は一日目、木曜日。
4日もあれば、グループは一日一日違うはずなのだが、さっきあげた4人は4日とも同じという。
男たちは厨房。女たちはウエイトレス、まぁ猫耳メイドてことだ。
今日の俺のグループは前半組み。
8時〜12時までなので人は少ないと予想していたのだが、それは全く違った。
計算違いの女が俺のグループに入っているわけで・・・。
カランカラン。
幸助が何故か買った、教室のドアを開けるとなる鈴が鳴った。
「いらっしゃいませぇ〜」
厨房で、必死に働いている俺の耳にでも、彼女の声が聞えてきた。
「あら!明日香ちゃんじゃない!!その服、似合ってるねぇ。そう言えば、風紀野郎と同じクラスじゃなかったっけ?あいつは?」
・・・。風紀野郎と呼ぶ奴は、あいつしかいない。
そう、部長だ。
「え・・・あ、風紀は今、厨房で頑張って働いていますよ」
店員スマイルで明日香は受け答えする。
「ふ〜ん」と言っている間も、周りからは「明日香ちゃん!これ頼む〜」という客からの注文が絶えない。
「は、はい!」と答える明日香も大変そうだ。
1年2組は大繁盛。
そのような放送が流れたのはそのときだった。
「風紀野郎って何担当?」
部長が、近くのウエイトレスに聞く。
「ふ、風紀野郎ですか?あぁ、彼はクレープでしたっけ?」
また部長は「ふ〜ん」と言った。
大繁盛しているわけで、殆どの人が席待ち。
先ほど入ってきた部長も、席待ちなのだ。
「ここの責任者って誰?」
またもや、部長の声が聞えてきた。
先ほどのウエイトレスに聞いているようだ。
「山田幸助ですけど」
ウエイトレスがそう答えると、部長はにやりと微笑を作り、
「呼んで」
と、一言。
俺の隣の隣の隣にいた幸助の顔が強張り、さっきまで部長と話していたウエイトレスが来た。
「女の人がお呼びです」と・・・。
幸助は恐る恐る、部長の下へと歩み寄る。
「な、何ですか部長?」
「クレープ一つ。まぁ風紀野郎のお任せで」
周りの人は沈黙。
「けど、やっぱりここは待ってもらわないと・・・」
幸助は少し言葉に力が無い様子。
「私の言うことが聞けないんですか?幸助君?」
必殺、にこやかビームが幸助に当たった。
「ハイ〜〜〜!」
幸助が、「キ〜キ〜」と言いながら俺の近くへ寄ってきた。
「部長の命令だ。従え」
・・・いや、俺はあんたに従うのが一番嫌いなんですが。
まぁ、部長を怒らすと怖そうだし・・・。
「お任せって言ってた」
親指だけを立てて、幸助のグットポーズ。
少し、顔に精力がない。それほど部長との面談がきつかったのだろう。
「まぁ、いっか」
そう言って、風紀オリジナルクレープ、チョコとイチゴと、ヨーグルト和えを作った。
因みに、この風紀オリジナルクレープ、チョコとイチゴと、ヨーグルト和えは、未公開である。
美味しいか、不味いかも分からないという優れものだ。
これを、凛に持たせ部長の所まで行かせた。
部長は満足した顔で、俺たちの猫耳メイドカフェを出て行った。
明日香は、何時になっても大変そうだ。
鼻血を出している男の割合は8割3分6厘も居たという情報だ。
あの服で、明日香の微笑を見たら・・・まぁ男ならそうなるだろうな。
分かるよその気持ち!
約束の12時。
「はい、交代です〜!」
と、一番忙しい時に交代をさせる幸助。
明日香が、着替える部屋に入っていくと、客足は殆ど途絶え、席待ちなんて無くなったと言う。
俺も着替えて、外へ行く。
文化祭の一番の楽しみが、他のクラスの行事を見ることだ。
早速、一人で行こうとする俺を、呼ぶ声が後ろのほうから聞えた。
「風紀〜〜!」
後ろを振り向くと、明日香の姿が。
「何?」
質問をすると、明日香は頬をポリポリと掻きながら、
「一緒に行動しようよ」
と、最高の照れ笑いを見せた。
学校一美人と共に行動しようといわれて、拒否する奴はそう居ない。
「おう」
と俺は、了知した。
「何処行きますか?」
明日香にそう質問されて、戸惑う。
・・・どうする?
どうする?
どうする俺!
って、どっかのCMのまねをしてみる俺。
「何してるの?」
と明日香に不思議そうな顔をされたが、まぁほっておこう。
「それで、何処行く風紀?」
・・・何処にしましょうか。
亮平のクラスは、『笑うの堪えて』だったような気がするし、
悠太のクラスは、ストラックアウトだっけ?
先輩達のクラスは何やっているか忘れた。
「風紀?」
質問攻めだ。
「ど、どうするア・イ・○・ル〜♪」
「私、アイ○ルじゃないよぉ!」
もぉ〜と言いながらも笑ってくれる明日香。
いい奴ですね本当に。
俺も何故か、笑みがこぼれた。



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