「風紀〜!朝だよ〜!」
自分の部屋のベットの上で、伸びをする。
いつものように、明日香の可愛らしい声で目覚めた俺は幸せものだ。
「ふぁ〜」
大きくあくびをして、パジャマのままドアを開ける。
「おはよ・・・」
目を擦りながら言う俺。
「おっはよぉぉ!」
いつものように、元気よく言う明日香。
「今何時?」
明日香が時計の方に目をやった後、
「10時過ぎ」
と、言った。
「へぇ〜10時過ぎか・・・って10時過ぎ!?」
因みに今日は、学園祭2日目。
「お前、完璧遅刻じゃん!」
キョトンとしながら俺の話しを聞く明日香。
服装は、まだパジャマのよう。
グッ・・・いつになっても、明日香のパジャマ姿には慣れないぜ。
「大丈夫風紀?」
「大丈夫も何も、お前全く焦ってないな!10時過ぎだぞ!?」
まだ、キョトンとしている明日香。
俺の言葉が理解できないのか!?
「分かってるよ?私たち、今日後半組みだよ?」
「あぁ!後半組みだよ!・・・あぁ後半組みか」
納得する俺。
まぁその理由は、俺たちの学校は、学園祭は何時に行ってもいいという。
だから、仕事が無い人は、家で休んでいていいのだ。
それで、俺たちは12時から猫耳メイドカフェに入らなければならない。
逆を言うと、12時までゆったりとしていていいわけだ。
「おっけ・・・理解した」
俺がそういうと、明日香は「そっか!」と言って、いつもの満面の笑みを俺に見せてくれた。
「やっぱこれが俺の朝!」
明日香は不思議そうな顔をしたが、ほっておこう。
ドアを閉め、パジャマから制服に着替える。
一応学園祭でも、制服で登校なのだ。
着替えてリビングへ行くと、明日香の制服姿がいつも拝めると言うわけだ。
分かるかいジョニー?(そんな登場人物は存在しません)
少し違う登校日となった今日だった。


「おはよぉ〜」
12時1分
俺と明日香は、着替えて店に出る。
「また仲良く二人で登校か?」
幸助が俺たちと同時に店に入ってそう言ってきた。
「まぁそんな感じ」
「いいねぇ〜アツアツカップルは」
「いや、カップルじゃねぇし」
ニヤーと笑う幸助。
「気持ち悪い」と俺は言っても、その表情は変わらず鼻歌まで歌い出すと言った感じだ。
幸助が自分の持ち場の飲み物を継ぎ終えると、
「沙希ちゃん!」と呼んで、コーヒーを渡した。
それにしても、沙希の猫耳メイド姿。
明日香たちとはまた違う見所があるな。
だって、いつも口悪いあの沙希がだぞ?
あんな格好・・・。
「プッ」
思わず笑いがこみ上げてしまった。
「何、笑ってるんだ風紀?」
沙希が俺の方を向いて睨み付ける。
「いや、何でもナイッス」
心の中では大爆笑。
「そうか」と、言ってコーヒーを運んでいった。
猫耳メイドの格好をした2組のクラスの女が厨房の前にやってきた。
「イチゴジャム&プリンの盛り合わせのクレープ一つ」
クレープ・・・俺の番か。
「ういっす」
そう返事をして、俺はイチゴジャム&プリンの盛り合わせのクレープを作り始めた。
また、猫耳メイド姿の2組の女がやってきた。
「ヨーグルトと、ミカンのかき混ぜクレープ2つ」
またか・・・。
「ういっす」
と、またも返事して俺は、ヨーグルトと、ミカンのかき混ぜクレープを作り始める。
「風紀オリジナルクレープ4つ」
「ういっす・・・って何だよそれ!」
注文を受け取った人は「さぁ?」と言いながらその場を去った。
現在抱えているクレープの量、7つ。
明日香が店に入ったせいか・・・。
クソッ!どうしてこうも、明日香は人気なんだ!
俺の仕事増やすなよ・・・。
溜息をつきながら俺はクレープを作り始める。
それにしても、風紀オリジナルクレープを知っているのは部長だけのはず。
チョコとイチゴと、ヨーグルト和えは昨日考えたんだけどなぁ。
疑問に思いながらも、ひとつ、ひとつと作りはじめた。

「やっと終わった〜!」
俺は厨房で倒れ中。
何故か今日は異常にクレープの注文量が多かったな。
「お疲れさまぁ〜」と言いながら、殆どの男共が俺の上を跨って行く。
まぁ、その状態で大体20分ぐらいジーとしていると、ドアが開く音がした。
「大丈夫風紀?」
明日香じゃなく・・・凛だ。
「あぁ、普通」
いや、普通じゃないんだけど。
体が動かないわけで、大丈夫なわけが無い。
「お疲れ様」
そういい、凛がスッとしゃがんだ。
その瞬間、俺の唇にやわらかい感触が。
「・・・」
「エヘ」
「・・・」
「ふ、うき?」
「・・・」
「あのぉ〜」
何故黙るのか教えてやろう。
理由は簡単。
女に触られ、その場所が口と口というわけだ。
この俺が失神しないのが奇跡だろう。
なんとか、まだ意識はある。
そして、俺の眼に映る人物が二人いたからだ。
一人は、俺にキスした凛。
もう一人は、その悲劇的な場面を目撃した明日香。
悲劇的な場面を目撃した方は1秒も立たずに、俺の視界から消えていった。
その後に、廊下を走る音。
ドテン!と、誰かがこけた大きな音がしたが、それは気にしないでおこう。
その後また、パタパタと廊下に響く音がした。
その音が、何故か俺の心に響いた。



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