「はぁはぁはぁはぁはぁ」
私は、学校を抜けて川の近くによっていた。
そこは橋の下。
郁の姿は、見えない。
「何で逃げてるんだろ?私」
あの時、郁が私のことを愛してるって言ってくれたのに。
普通、こういうものって嬉しくない?
現に、新斗君に告白されたときも、私の感情は高ぶってた。
嬉しかった。
のに、何故!今はこんなに胸が痛いのだろう?
苦しいのだろう?
「はぁはぁはぁはぁ」
未だに私の息は荒い。
鞄は学校のあそこへ置いてきてしまった。
まぁ多分、真苗か郁が持ってるだろう。
そのときポロリと涙がこぼれた。
そこからどんどん溢れてくる涙。
「止まれよ。止まれ・・・と、と・・・止まれってぇ」
私がそう言っても、大洪水は止まることは無かった。
ただ、流れ続けるだけだった。


「か、楓・・・」
俺が楓のことが好きだって事・・・聞かれてしまった。
真苗が言うとおり、俺の気持を知ったらあいつは壊れてしまうだろう。
今まで大親友だと思ってた奴に、「愛してる」なんて言われたら、どうしたらいいのか分からないに決まってる。
しかもあいつの性格だ。
新斗の時は俺と言う逃げ場があったからいいものの、今のあいつに逃げ場などない。
俺が「愛してる」って言ったとき、真苗が居たから真苗にも相談できないだろう。
ましてや新斗。
自分の事を好きだって言ったやつに相談なんて出来るわけが無い。
そんでもって必ずあいつは無理をして笑顔を作るだろう。
そうしたら本当にあいつの心は・・・精神は。
どうしよう・・・。
俺は、自分に腹が立った。
あいつを一人にしたら必ず真苗か俺を探すに決まってる。
なんで気付かなかったのだろう。
駄目だ俺。
「どうするのこれから?」
帰り道を探していると後ろから真苗の声が。
「お、お前いつから俺の側に?」
「ずっと居た」
こ、こいつは忍者か?
どんなやろうでも、こんだけ走って俺の側にずっと居たなら嫌でも俺は気付くだろう。
しかも、息一つ乱れていない。
「なんてやろうだ」
俺はそう呟いた。
「で、どうするの?」
真苗は普通の顔でそう聞いてきた。
「どうするって言われても」
「楓泣かした。お前、このままなにもしなかったら殺す。分かってるか?」
真苗・・・ってこんなんだっけ?
いつもは大人しくて目立たない子。
・・・俺の想像をはるかに超えた人物だ。
「まずは、あいつを探す」
うんうんと頷く真苗。
「そんでもって、ちゃんと告白する」
「・・・え?」
「もうバレタもんは仕方ないだろ?あんな分かり方じゃ俺は嫌なんだ。今まで楓の心をジェンガのように崩さないように刺激を与えてきた」
「けど、ジェンガはそのうち崩れる」
「うん。今崩れたよね。だったら、もう一度組み立てればいい」
「そんなこと・・・」
「ジェンガはな、崩さないように抜く方が難しいんだ。組み立てる方が簡単なんだよ」
真苗が一回空気を吸ってから俺にこう聞いてきた。
「そんな簡単じゃない」
俺は、一度鼻で笑いこう答えた。
「俺たちの絆を見くびるなよ?」
今日、初めての笑顔を見せた気がした。



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