「い、郁?」 電話の向こうでは騒がしかった。 「ど、ど、どうしたの?」 すっごい喋りにくいんだけど。 『俺!新斗だけど!郁が・・・』 電話の向こうは新斗君だった。 「し、新斗君?どうしたの?」 『郁が・・・轢かれて』 「え!?」 ど、ど、どうしたぁ!? 「郁が?」 『そう、郁が・・・だから、早く来て!』 「何処に!?」 『東当山病院』 「わ、わかった!」 プツッと新斗君の電話を切る。 「楓どうしたの?」 真苗が心配そうな顔で私を見つめる。 「郁が、轢かれたって」 「・・・」 「ど、どうした真苗?」 「嘘!」 「本当。だから、大急ぎで病院行かなきゃ!」 「私も!」 私達二人は家を飛び出した。 そして、丁度良く来たタクシーを止めて乗る。 「東当山病院まで!」 私は車内でそう叫んだ。 「ど、どうしよう」 不安、焦り、心配。 私の心は今それで埋め尽くされている。 もし郁が死んだら? もし郁が意識不明で目覚めなかったら? もう、郁と話せなくなる。 会えなくなる。 「そ、そんなのいやだよ」 もう、泣く力が無いと思ったのに。 涙が勝手に出てきちゃう。 「か・・・楓」 真苗が私の名前を呼ぶが、返事をすることが出来ない。 ただ涙が私の頬を素通りしていくだけ。 「い、郁ぅ・・・」 なんだろこれ。 『恋』だなんて習わなかったはず。 一番頭いい私でも『恋』と言うものは習わなかったはず。 なのになんで、これが『恋』『Love』だと思うの? そう、確信が出来るの? それじゃ私、郁の事が好き・・・なんだ。 郁の事が好きなんだ。 「真苗ぇ」 私が泣きながら真苗の名前を呼ぶ。 「なに?」 「私ぃ・・・私ぃ・・・」 近くにいるからこそ分からないことなんだ。 恋心っていうのはいつも私の側にあったんだ。 郁への思いはこんなに大きかったんだ。 「郁の事が大好き」 私がそういうと真苗様は笑顔でこういった。 「そっか」と。 その後、真苗の手は私の頭を撫でてくれた。 「大丈夫。郁、頑丈だから」 「うん・・・」 自分の気持ちを知った今、涙が止まらないほど嬉しかった。 車がキキッ!と言って止まった。 「東当山病院に着きました」 運転手さんがそう言って、私は金を払いタクシーを出た。 病院の中に入ると、受付へと走っていく私。 すると、新斗君の声がした。 「楓!こっちこっち!」 私はキュキュッと言わんばかりに方向転換をして、走って新斗君の下へと駆け寄った。 「郁は!?」 「あそこ」 指が指す方へと目を向けると郁が元気よく立っていた。 「よっ楓!」 「・・・郁?だ、大丈夫なの?」 「まぁな。少し轢かれて吹っ飛んだだけだけど、まぁ俺はかすり傷と打撲って所」 「・・・なんだ。そうなのか」 そういや昔から郁は頑丈だったね。 学校の3階から落ちたときも、ホームランボールが頭に直撃したときも、郁はなんとも無かった。 「心配して損した」 真苗がそういうと、私の心は一瞬にして安心で溢れて涙が出てきた。 泣きながら郁に駆け寄る私。 そして郁へと抱きついた。 「馬鹿!心配かけさせるなよ」 私が顔を郁の胸に当てながらそう言った。 「ごめんって」 いつもの郁のへらへらした笑い声。 もう本当に郁は馬鹿なんだから。 「ねぇ郁。私の事どう思ってる?」 「え?」 「Like or Love?」 「勿論Love」 郁がそういうと私は笑った。 「私も、郁の事大好き!Loveだよ?Love!」 エヘヘと言いながら私は言った。 周りから見たら馬鹿カップルだろう。 「マジで?」 まぁこいつは本当の馬鹿だけど。 「マジでぇ〜」 だけどそんな郁を愛してしまった私。 Like or Love? 私も、今なら胸を張ってこういえる。 「I Love Iku」 ←戻る TOP あとがき |
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