「よっ!待った?」
待つも何も20分。
今の私には途轍もなく長く感じた時間だ。
逃げ出したいし、だけど郁が待ってろって言ったし。
という葛藤が私を襲っていたからだ。
すっかり、郁に「待った?」と聞かれているのを忘れていた。
「おい。聞いてんのか?」
いくの顔が、フレーズアップ!
私は、一瞬体をそらした。
見慣れたその顔に、私はびびったようだ。
は、恥ずかしい。
いや、恥ずかしいというよりも、情けない。
「はぁ〜」と大きな溜息をつくと、「大丈夫か?」といういくの声が聞えた。
「いや、大丈夫」
手をOK牧場マークにして私は、家に向かって歩き出した。
「ちょ、ちょっと待てって!」
私の肩をつかむ郁。
郁に「帰るんじゃないの!?」みたいな雰囲気を醸し出してみたりもした。
「ちょっと、お茶していこうぜ」
あんたはナンパのお兄ちゃんか。
まぁ、郁に誘われることもないし、私は大きく頷いた。
只今の時刻、4時2分。
風が吹き荒れた時だった。

カランカランと店のドアの音がする。
多分この音は、客が入ってきたのだろう。
私たちは、向かい合って座っている。
店の名前は、ドノーミューっていう、喫茶店。
結構なかは広く、噂で聞いたのだが、林檎ジュースはコップに林檎が入ってるだけの品物らしい。
まぁそのためか、各席には、ミキサーと言う恐怖の凶器が置いてある。
ビーーー!
あっ、今隣の席が回し始めた。
こんなところは・・・喫茶店といえるのだろうか。
ふと、疑問に思った顔をすると、郁はこう言った。
「ここ常連の店なんだ」
ズズズズズズズズと音を立てながらオレンジジュース?を飲む郁。
勿論、オレンジジュースもミキサーだ。
しかし、また疑問に思ったことがある。
使ったミキサーはどうするのか?
そう思いながら、目の前にあるメロンの4分の1サイズとコップをどうしようか迷っていた。
すると、郁の手が私のメロンへと伸びる。
が、しかし!そのまま方向転換して、ミキサーのほうへ。
そして、隣にあるミキサー洗い場?見たいな所にミキサーを入れて、ポチっとスイッチを押した。
グゥングゥンとか、バシャバシャと色んな音が鳴り終わると、郁は先ほどの場所からミキサーを取り出した。
そのミキサーはあら不思議。すっかり綺麗になった。
「これでOK?」
にこっと、郁の女落としスマイル。
そのスマイルを私はあっさりと避け、メロンを郁の手にへと渡す。
そのメロンを郁は手にとると、ミキサーに放り投げた。
ビーーーー!
メロンがぐちゃぐちゃになっていく。
30秒ほど回すと、郁はミキサーを止め、私のコップへと見るも無残なメロンのジュースを入れた。
どぼどぼどぼと音がする。
「はいどうぞ」と言って、郁は私にメロンジュースといえるのか分からない品物を差し出した。
一口飲んでみる。
・・・メロン。
これが、本物の100%果汁だ。
コップを置くと、郁のことを思い出した。
思い出したと同時に、郁が話し始めた。
「お前に話があるって言ったよな?」
私は無言で頷く。
「まぁ・・・ちょっとした話で。驚くかもしれないけど」
・・・付き合ってるのか。
その話か。
逃げ出したいと、本気で思った。
悲しくて、胸が痛くて・・・。
・・・おい。
ちょっと待て。
最後の方は、間違っている。
悲しい・胸が痛い?
なんでさ?
逃げ出したい?
何で・・・?
郁の顔を直視できない自分が居る。
「父さんと母さんが、今日から1週間旅行に行っててさ。情けない話、俺って不器用じゃん?だから面倒見てくれないかな?」
え?そんなこと?
悲しい?胸が痛い?逃げ出したい?
なんじゃそりゃ。
そんな感情を一瞬でも浮かんだ私自身にイラついてきた。
「ば、馬鹿野郎!」
私は、意味もなく叫んだ。
そして、回りの注目を集めた。


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