郁が、私の家にお邪魔になって3日目。 郁の初日はお母さんとの談話で終わっていった。 次の日の朝、郁の表情はグダグダ。 言葉では「大丈夫?」とかかけていたけど、 心の中ではざまぁみろと思って居たりもする。 可哀想な郁だけど、家にきたからにはそのような、厄介な事もしなければならないということは分かっていただろう。 因みに、昨日の郁がトイレに行った回数32回。 お母さんの話から逃げるためだろうが、私のお母さんをなめてもらっては困る。 永延に話し続けるのだろう。 そこで少し、郁に同情した私だった。 「大丈夫か郁?」 げっそりしている郁に心配したのであろう。 新斗君が郁に話しかけている。 しかし、私は知らん振り。 郁はなんだかんだ言ったって、もてるからね。 お世話になっているなんて言ったら、どんな仕打ちが待っているだろうか。 考えるだけで、、、恐い。 私が外を眺めていると、真苗が話しかけてきた。 「この前のやつ、ガセネタだった」 そういい残し、自分の席へと戻っていった。 ガセネタって・・・人騒がせな。 私の心境、パニクッタじゃないか。 「はぁ」と溜息をつく。 そのまままた、外を眺めた。 空は青くて広い。 時に、白にもなったり黒にもなったり、オレンジにもなったりするが、今は青い。 風も吹いていない。 雲はゆっくりゆっくり動いている。 時々入ってくるそよ風が気持ちよくって。 私は、その場に寝ていってしまった。 「・・・ん」 私が目覚めたときには空はオレンジ色が掛かっていた。 隣には、大きな欠伸をする郁。 起こせよ。と心の中でつっこんだが、よく見てみると、郁もぐっすり寝ている。 さっきの欠伸はなんだったのだろうか。 疑問に思ったが、気にしないことにした。 郁の寝顔。 昔は毎日毎日見ていた気がする。 だけど、私たちも年頃になって、一緒に寝るという行動は無くなった。 いつからだろか。 よく覚えていない。 中1ぐらいは、同じ部屋で寝たことは覚えている。 よく考えてみると、新斗君に告白されてからは全く無くなった。 恋の話をしないと同時に。 郁の寝顔を見ていると、自然に笑みがこぼれた。 何時の間に、こんなに男前になっちゃって。 10分ぐらい、眺めていたのだろうか。 郁が「楓・・・楓・・・」と呟いた。 そういえば、昔も寝言言ってたね。 不思議と昔の出来事に浸っている私。 「郁、何?」 そう聞いたが何も答えない。 「つまんない」と呟いて、オレンジ色に染まった空を眺めたときだった。 「好きだ」 確かにそう聞えた。 私は驚いて、郁の方を再び見る。 「す〜す〜」と気持良さそうな寝息を立てながら寝ていた。 え? 寝言とは言え、はっきり言いすぎ。 「私も、好きだよ郁」 耳元でささやく。 すると、郁の顔がパァと笑顔に変わって行った。 「面白いな」 勿論、私と郁が言った「好き」はLikeである。 友達としてのLikeである。 決して、男、女としてのLoveではない。 それは、私たちの中でも暗黙の了解なのだ。 「郁、そろそろ行くよ?」 パンパンと手で郁の頭を叩く。 「ぅ〜」と言いながら郁は起きてきた。 「おはよぉ」 私は、満面の笑みで言った。 「あっ・・・おはよ。いつの間にか寝てたのか」 そう、そこが不思議なのである。 何故、郁は私の隣の席に座って寝ているのか。 郁の席はあんなに離れた場所と言うのに。 「あぁ変な夢を見た」 ポリポリと頭を掻く仕草。 オレンジ色の光が当たって一瞬ドキッとしてしまった。 格好いいと思ってしまった。 「は、早く行くよ!」 私は郁の手をとり、教室を出た。 ←戻る TOP 進む→ |
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