「ふぁ〜〜」
朝早くから、欠伸の音がする。
この音は私のものではない。
彼のものだ。
「郁・・・私の家で寝ること無いでしょ」
しかも私の部屋で。
・・・虐めですか!?
親が「楓の部屋空いてるわよ?」とか言い出して、
郁が一緒の部屋に寝ることになって・・・。
最近の親は、少しぐらい考えないだろうか?
私は郁の事が友達として好きだ。それは認める。
だけど、一緒の部屋に男女を一緒に寝かせることは無いでしょうが!?
しかも私の部屋で郁が寝ていると思うと何故か寝付けなくて。
郁の寝息が私の睡魔を消して。
結局の所、一睡も出来ずに朝を迎えてしまった。
欠伸をし終えた郁は私のほうを向き、「おはよう」と満面の笑みで言ってくる。
その笑顔に罪悪感が無いのを知って、私は溜息を付いた。
いつも通り着替えて、いつも通りに朝食を食べる。
ただし、郁が全てこの家にいること以外はね。
面倒は見ると言ったけど、ここまで面倒を見ることになるとは。
私、一生の不覚。
今日は、郁が私の家に面倒になってから4日が経つ。
いつものように、郁はお母さんの談話中。
早く学校に行かなければならないのに。
「郁〜?」
郁の名前を呼んでみたが反応無し。
「郁?」
もう一度呼ぶと、郁の顔がこちらを向いた。
「行くよ・・・」
私は、鞄を片手に持ち、独りでに家を出た。
一人で家を出るのは少し寂しい。
だけど後ろのほうで、パタパタ音がするので郁はもう来るだろう。
そう思いながら、足を進めた。
学校に着き、いつも通り郁と登校する。
それは、日常茶飯事なので誰も冷やかすことは無い。
「眠い・・・」
そういいながら、私は自分の席へと座った。
一気に睡魔が襲ってくる。
「お〜は〜よ」
微妙なテンションの真苗がこちらに来た。
「おはよ」
眠すぎて、喋る気にもならない。
「どうしたの?そんなくらい顔をして」
ニコニコの真苗。
なんであんたはそんなに機嫌がいいんだ。
絶対2重人格だ。
うん。間違いない。
「ちょっと、色々あってね」
私がそう答えると、ニコニコしながら真苗はこういってきた。
「色々?」
何故かそのニコニコが恐い。
仕方なく、私は昨日の夜の出来事を話した。
すると、思っても無い言葉が。
「それって恋だね」
「・・・恋?恋か・・・郁に?そういえば最近格好いいと思い始めてさぁ・・・ってそんなわけあるかぁ!」
力いっぱいのツッコミ。
私の今の気力ではレベル3のツッコミしか出来ない。
「まぁ良く考えて」
ニコニコしながら真苗はそう言って自分の席へと戻った。
え?
ボケじゃなかったの?真苗さん。
私てっきり、ボケの方だと思って・・・おもいっきりレベル3のツッコミを。
『良く考えて』
その言葉が再び頭をよぎった。
意味分からないよ。
だって私、郁の事好きだけど恋じゃないもん。
それは、郁だって知ってるし、誰だってそう思ってるはずだ。
うん。
それは、恋じゃない。ただ単に眠れなかっただけ。
そう思っておこう。



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