映画上映中。 バタンと大きな音がした。 それは、ドアを閉める音であり、風紀が出した音である。 みんなの注目が、一瞬その方向に向いた。 映画という、メインを差し置いて。 「風紀野郎め」 私は、ひっそりと、そう呟いた。 上映中のため、今現在、風紀を追いかけることは出来ない。 しかし、追いかけたい。 捕まえて、大きな音を出したことを後悔さしてやる。 不敵な笑みがこぼれた。 「ククククククク」 「おい、美保。その微笑と言うか、悪魔の笑い声と言うか、どうとも言えぬ雰囲気を醸し出すのは、やめておいた方がいいぞ」 「龍。私は、風紀を追いたいんだけど」 アイコンタクトで脅す私。 龍にはこの技はあっさり避けられるのだが、今の私は最強なり。 「あぁ、あとは俺が仕切っといてやる」 面倒臭がりの龍が仕切ることに決定。 何故、先輩も龍を副部長にしたのかが未だに謎なのだが、最近分かってきたような気がする。 彼は天才。 映画の中ではね。 他の場所では、なんとも言えぬ人物だ。 彼は、私の極秘ブラックページに入っているほどの奴だからな。 「ありがと」 女の色気と、武器を使い、龍に御礼をする。 龍は、気持ち悪がっていたような素振りを見せたが、実は嬉しいのだろう。 恥ずかしがって・・・初心だね。 そういうところは、可愛い男の子だな。うん。 何故か、心から笑いがこぼれそうになった。 だけど、今は映画上映中。 なんとしても、音は出してはいけない。 大きく息を吸って、笑いをとめる。 しかし、また笑いがこみ上げてきた。 あの龍が、恥ずかしがっている。 その気持ちを考えると、笑いが止まらないのだ。 ・・・・? いや、私自身の主旨がずれている。 風紀野郎を追いかけなくてはいけない。 ゆっくりと、入り口へ近づきドアを開けた。 そして、ゆっくりと閉める。 音が出ないように、笑いがこぼれないように。 外に出ると、先ほど中にいたむさ苦しさとはうってかわり、涼しい風が吹き荒れる。 今から、誰かの一大事が起こるような風が流れる。 風紀野郎を見つけること。 それが、最初の任務でもあり、最後の任務でもある。 私は、周りを見渡した。 風紀野郎が出てから、私が出るまでの間の時間は、 だいたい、4分37秒。 コンマ7秒ぐらい間違っているかもしれないが、そこらへんは『だいたい』という言葉を用いて誤魔化す。 「風紀野郎・・・」 そう呟いてから、風紀が行きそうな場所へと向かった。 まずは、1年2組の教室。 猫耳メイドカフェがやっている部屋である。 50M6秒3の実力をいかし、ダッシュで向かった。 教室のドアを開けると、ほぼ空席ともいえる猫耳メイドカフェが。 ・・・一件見てみると風紀の姿は無い。 近くにいる1年2組のこと思われる子に「風紀野郎は?」と聞いた。 「香坂君は、今日はいないですね」 糞。 糞糞糞。 私のこの鬱憤は何処で晴らせばいいんだ。 廊下をゆっくり歩き、他に行く場所も無く、映画上映中の場所へと向かう。 その途中で、便所に言っていたと思われる、いじられ役である山田幸助が居た。 「お〜い!」 私は、幸助を呼んだ。 私に呼ばれ、頭の上に?マークをつけながら駆け寄ってくる。 ストレス発散道具として扱われることも知らずに。 「ククククク」と笑いがこぼれたが、これは先ほど龍に注意されたばかり。 ふと思い出して、笑いを堪えた。 右手に力を入れ、拳を固めた。 そして、来た瞬間に腹を思いっきり殴る。 ドスッっと鈍い音がすしたが、そこは心配ないと思われる。 そのまま幸助は私の足元に倒れ、気絶した。 起きた頃には、何が起こったかは覚えていないだろう。 幸助を殴ったおかげで少しは気が晴れた。 幸助の気絶姿を、見ているともっと殴りたくなってくる。 しかし、そこは可愛そうなのでとめた。 このままの状態じゃ、少し危険状態に入る。 誰かにこの姿を見られたときには、私の素がばれてしまう恐れがある。 ぱっと、周りを見渡すが、私たちの光景を見た人らしき影はない。 ・・・幸助を隠さなければ。 幸助の袖を持って持ち上げる。 体格からすると体重は55Kgぐらいだろう。 両手で軽々上がる程度だ。 近くに掃除用具入れがある。 そこに投げ入れ、はい終了。 パンパンパンと自分の掌をたたき、一息ついた。 そのまま上映中の場所に入って行き、風紀のことをさっぱり忘れ映画を鑑賞した。 ←戻る TOP |
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