2日目の朝。
俺はいつものように明日香の可愛い声で起きた・・・かった。
「おい風紀朝だぞ!」
その声は男くさいがよくよく聞いてみるとかっこいい声。
清水 亮平。
体を揺らされ徐々に瞼が開いていく。
「やっと起きたか」
ポリポリと頭を掻きながら、面倒くさそうにしている。
「おはよ・・・」
目を擦って伸びをする俺。
「早く着替えろよ。今日はキャンプに行くらしいから」
「そうだったっけ」
良く見ると亮平は昨日のパジャマとはもう違って、普段着に変わっている。
亮平を見た後時計の方に目を持っていく。
「11時!?」
思わず声を上げてしまった。
そう、俺の記憶が正しければ11時に下に集合なのだ。
「亮平!もっと早く起こしてくれよ」
服を脱ぎながら言う俺。
「10分ぐらい起こし続けたよ・・・」
呆れながらこちらを見る目。
痛い、、、痛いよその目は。
さっさと普段着に着替えて、下に直行!
階段のギシギシと鳴る音を無視。 全体重をかけて、2段抜かし。
玄関の前に到着。
「あ・・・れ?」
そこには誰も居なかった。
「お前、まだ10時だぞ?」
ゆっくりと2階から階段に座って見下ろしてくる亮平。
「・・・へ?」
玄関に置いてある時計を見る。
・・・10時。
もしかして見間違えたのか?
うわぁ恥ずかしい!
「今からキャンプの準備するから明日香の部屋にきてって言ってたぞ」
そう言ってゆっくりと亮平は立ち上がった。
俺も俯きながら階段を上がる。
そして、明日香の部屋の前に来てコンコンとノックをし入る。
「おはよ〜!」
明日香が満面の笑みでいつものように言ってくる。
やはりこれが俺の朝だな。
「さっきすごい音がしたけどなんだったの?」
「・・・」
思い出さすな明日香。
「なんでも・・・」
なんでもないよと言おうとしたが、俺のその言葉はあっけなく亮平の言葉に遮られた。
「風紀が10時と11時見間違えてさ。急いで玄関まで走っていった音」
3秒ぐらい間があって明日香と沙希が笑い出す。
俺も俺で笑うしか出来なかった。
「風紀少し馬鹿だよね?」
沙希が笑いながら言ってくるから余計むかつく。
「うっせぇ!そういやキャンプの準備するんだって?」
「明日香、俺と風紀は何すればいいの?」
明日香は少し悩んだ後、
「お母さんに聞いて」
と言った。
その言葉を明日香が発した後、タイミングよく明日香のお母さんが入ってきた。
「うんうん皆集合したわね」
頷きながら明日香のお母さんが言っている。
「じゃあ今から皆で車にキャンプの用意を入れましょうか」
「は〜い」とみんなの声がそろった。
10分後、亮平が一番頑張って、車の中に荷物を乗せ終わった。
「つかれたぁ・・・」
これがみんなの口からこぼれた言葉。
明日香のお母さんは人使いが荒いな。
自分は何にもしていないのに・・・。
「さっ出発しますか!」
そう言って手を叩く明日香のお母さん。
どこか仕草が明日香に似ている。
そして、俺たちは車に乗り込む。
当たり前のように明日香のお母さんは運転席。
明日香は助手席で後ろの席に左から沙希、亮平、俺と言う順番だ。
ちょっと高校生が3人乗るときついのだが、乗れないことも無い。
「レッツゴー!」と言って明日香のお母さんは車を発進させた。
車の中では俺が一番大人しいかも。
沙希と亮平は二人で話しているし、明日香は明日香のお母さんと話している。
まぁこの座席の席からすると自然にこうなるのだ。
亮平は女子と話すときは噂の話をしない。
昔、それを話したことで女の子に嫌われたことがあるかららしい。
「はぁ・・・」と溜息をついて外を見た。
自然がいっぱいで空気がよさそう。
30分ぐらい車に乗って、目的地に着いた。
「到着〜!」
明日香のお母さんが車の外に出てそういった。
俺は明日香のお母さんの次に車から出て空気を吸う。
・・・うまい。
2回、3回と吸う。
やはりうまい・・・。
意味もないのに俺は何度も吸い続けた。
「・・・おい馬鹿」
俺の頭に衝撃。
亮平が俺を叩いたのだ。
「痛ってぇな!何だよ!」
と、言って後ろを向くと「おい馬鹿」の意味が理解できた。
みんなはキャンプの用意を運んでいる。
「・・・はい分かりました」
そう呟いて、俺はみんなと同じように、荷物を運び始めた。
荷物を運び、キャンプが始まった。
「キャンプをしよう」と言っていた明日香のお母さんはまたもや何もしていない。
明日香も沙希も「焼くのは男の仕事!」と言って食べる準備だけ。
俺と亮平は溜息をついて野菜と肉を焼き始める。
「・・・あまり食えないな」
俺は肉を裏返しながら亮平に呟く。
「そうだな」
やっぱり亮平も思っているらしい。
何で俺たちがそういうこと思っているのかというと、
「風紀君!お肉まだぁ?」
明日香のお母さんが俺の後ろでスタンバイしているからだ。
「あと少し待ってくださいね?」
明日香のお母さんだ。キレることは出来ない。
そして、出来上がった肉を明日香のお母さんの皿に入れる。
「小母さん食べすぎですよ」
笑いながら亮平が言う。
亮平がそういった直後俺たちの顔は硬直した。
ズゴォォォォン!
熊も驚くフックが亮平にあたったのだ。
「ぐぉっ・・・」
亮平はそのまま意識なし。
蹲って倒れている。
「あら、どこに小母さんなんているのかしら」
その亮平を殴ったのはもちろん明日香のお母さん。
「お母さん!」
明日香が明日香のお母さんに近づく。
「大丈夫、骨は折れないところをつついたから」
・・・いやいやつついたじゃ収まらないですよ。
「まぁそのうち目覚めるからそこらへんにでも寝かしておきましょう」
にこっと笑って俺を見た。
「そ、そうですね」
としか言わさない顔をされ、俺は亮平を運ぶ。
大丈夫か亮平?
もう死んだのかと思うぐらいすごい音がした。
「風紀君!お肉まだぁ?」
・・・絶対に逆らえない。
俺は初めてと言う位、心の底から思ったのだ。


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