「ではでは、今から選考会をしたいと思います。呼ばれた人は前に出てきて、自己紹介と質問に答えてください」
亮平が長い机に座り、そう言った。
その隣には、明日香が。
その隣に何故か俺。
面倒。
心の中で呟きながら、一年生の選考会は始まった。
色々な1年生が居る。
明日香目当ての男共。
亮平目当ての女の子。
映画に興味がある人たち。
友達に流されて入った子。
その中に・・・ある子が居た。
「じゃあ次の人、どうぞ」
亮平が次の子を呼んだ。
俺も、ボケーとしてたので、彼女が前に出てくるまで全く気付かなかった。
「「あっ!」」
俺と、その子の声が重なる。
「あ、朝美・・・?」
え?みたいな顔をする亮平と明日香。
「なんで、ここにいんの?」
俺は、少し頭の中がパニック状態の中聞いた。
「ふ、ふうにい? ふう兄なの!? うわぁ!」
え? え? みたいな顔をする亮平と明日香。
明日香と亮平を差し置いて、朝美は俺に猛突進。
・・・するはずが、俺の前に机があるので、それにひっかかって痛がるというわけで。
ドシーン!
大きな音を立てて、朝美は机に突っ込んだ。
「だ、大丈夫か?」
「え?あぁ、うん」
俺は、朝美の手を取り立たせてあげた。
「知り合いなの?」
「あぁ、まぁ。簡単に言うと・・・」
俺が朝美を説明しようとすると、朝美が自ら自己紹介を始めた。
「木村 朝美(きむら あさみ)です! 姉の凛がいつもお世話になってます」
ペコッと頭を下げる朝美。
亮平は驚いた顔をしていた。
明日香はと言うと、唖然とした表情。
まぁ、似てないからなこの姉妹。
それより、先に進めなきゃ。
「亮平? お〜い! 亮平?」
え?みたいな顔をされた。
そんな顔をされても困るんですけど。
「進めろって」
俺がそういうと、ペコペコと縦に首を振った。
「スリーサイズ・・・じゃなくて応募した理由は?」
朝美は元の場所に戻り、質問に答えた。
「えっとぉ映画大好きですし、演技が好きなもので、映画研究部に入りたいなと思いました」
真直ぐな目の朝美。
そういう目が、凛とは違うんだから。
それから色々質問をして、朝美の番が終わった。
人それぞれに、10段階評価であらわす。
俺は、なんとなく一緒の部活にはなりたくないので、6にした。
しかし、こっそり隣の明日香と、その向こうの亮平を覗くと、明日香が9で亮平が10。
威容に高い数字だ。
「じゃあ次の人」
亮平がそういい、次の日とに番がまわった。
それから2時間以上立ったのだろうか。最後の一人も終わり、選考会はやっと終わった。
「つ、疲れた」
さすがの亮平も疲れたみたい。机に伏せる形になっている。
「それにしても、凛に妹がいるとはな」
そのままの状態で亮平が言った。
「あいつの家族は色々あるからな」
と俺は言って、詳しくは説明しなかった。
説明すると話が長くなるし、なにより話すのが面倒なのだ。
亮平ならそこらへんは調べてあると思ったのだが。
これまたひとつ、亮平の調べ損ねたことだろう。
「風紀ぃ! 早く帰ろうよぉ」
俺の肩に触ろうとする明日香。
そんな簡単に、俺の身体に触れられるとでも思ったか!
俺はすぐさま椅子から横に跳んだ。
「そんなに、逃げなくてもいいのにぃ」
ウルウルした目を覗かせる。
おいおい泣くなよ。
泣くなって!
「ご、ごめん! 俺のせいだから、泣くなよ」
涙を手でふき取り、言葉を発しないまま縦に首を動かす。
その行動が、ものすごく可愛く思えた。
「あ・・・明日香。帰るぞ」
また、縦に首を振る。
俺は自分の鞄を持ち、特別教室を出た。
この体質、本当に最悪。
明日香は涙を拭いながら俺の後ろをちょこちょこついてきた。



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