「ふう兄! ふう兄ってばぁ!」
なんか、居るぞ。
「ふう兄がこんなところ居るなんてねぇ」
朝から騒がしいな。
「ふう兄って、彼女いないんでしょ? でしょ?」
聞こえない聞こえない。
「まさか、明日香様と付き合ってるの?」
「え? 明日香・・・様?」
一瞬言葉を失った。
明日香様だって! 明日香様。
「ち、違うよね? 付き合ってないよね?  風紀」
言葉に迷ってる俺を見たのか、明日香は俺にそう言ってきた。
「う、うん」
「もう、凛お姉ちゃんって何も教えてくれないんだから」
「そうそう、学校来たら凛の所に行ってろって。久しぶりのご対面なんだろ?」
こいつら姉妹は、何かと複雑な関係らしい。
凛と朝美はお父さんは一緒。
そう、お父さんは。
お母さんは別々だけと言う、血は繋がっている姉妹。
「え〜久しぶりじゃないよ。昨日も会ったもん」
ブーと何故か頬を膨らます朝美。
「そうなんですか。じゃあ早く自分の教室に戻りなさい」
俺がそういうと、学校もそのことに賛成だったのか、授業が始まる5分前の予鈴が鳴った。
予鈴がなると、やっと観念したのか自分の教室に戻っていった。
その際ブンブンと大きく腕を振ってさよならをしてくる朝美を俺等は無視をした。
誰が嬉しくて、あんな行動する奴と関わらなければならないのだ。
恥ずかしいったらありゃしない。
そして俺達はやっと二人になれた。
「つ、疲れたね、風紀」
「う、うん」
やっぱり、彼女は映画研究部に入れないべきだろう。
そう思ったのは、俺だけじゃなかったんだと思う。
そして、俺達は教室に入った。
「おっはよぉ!」と明日香が大きな声をあげて。

学校も終わり、部活にも行って、二人で帰る帰り道。
俺は、嫌な視線を感じた。
背中に冷や汗が流れるような感じ。
チクチク刺さる視線が。
バッと後ろを向いたが誰も居ない。
そんな俺を見て明日香は「どうしたの?」と心配してきたが、変な事で明日香を心配させるわけにも行かない。
俺は笑顔で「なんでも」と答えておいた。
それから少しの間、後ろが気になって仕方なかった。
次の日の放課後、部活。
今日は、新1年生合格発表の日だ。
2年生の小倉 海(おぐら うみ)は一人で読書をしていて、飯塚 克紀(いいづか かつのり)は幸助と一緒に女の子をじろじろ眺めて、「あの子可愛いよね?」とか、「うわ〜スカート短けぇ!」とか言っている。
そういうところは本当に気が合うんだな。
天春 高良(あまはる こうら)は明日香の後ろに座って欠伸をしている。
3年生の悠太は今の時期の風邪で休みらしい。
静香と五十鈴は二人揃って、仲良く座っていて、俺と明日香と明日香に抱かれながら恥ずかしそうに顔を赤らめている神子は一番1年生が見える位置にいて、亮平の登場を待っている。
亮平はと言うと、一年生の前でマイクを持って登場してきた。
「え〜今から、合格発表したいと思います」
そういい、マイクのスイッチを入れた。
亮平が登場したとたんに、女の子の目が変わる。
そんなに格好いいか亮平は。
男共の目にも明日香しか写っていないだろうと、勝手に推測している俺も、明日香の方ばっかり見ているのも事実。
男共の気持ちが分からない事も無いのだ。
「採点方法は、俺と、明日香と、風紀の3人の評価で決まる。大体は、熱意や印象など」
そういい終わると、意味もなく拍手が起こる。
「え、え〜と、では合格者を発表したいと思います。」
去年はあんなに居たのに、4人だったからな。まぁ、光雄先輩は厳しかったのだから当たり前か。
「笠井 俊(かさい しゅん)君。一番点数が良かった子ですね」
『おぉ〜』と、いう声が上がった。
確か、この子は自分の声のよさと、演技力を見せてたっけ。
かなり、上手かったので覚えてる。
「次に、佐原 澄(さはら すみ)さん。おめでとう」
パチパチパチと拍手が沸き起こる。
「あ、ありがとうございまふん!」
ございまふんってなんだよ。
面白い子だなこの子は。
「次に、草創 倉見(そうそう くらみ)さん。おめでとう」
「ありがとうございますぅ!」
大きな声をあげてそう言った。
結構可愛い。一年生の中では一番かな。
「次に、山本 苺(やまもと いちご)さん。おめでとう」
パチパチパチと拍手が沸き起こった。
「あ、ありがとうございます! 本当に嬉しいです!」
わ〜って手を組んで胸の前に当てている。
「可愛い〜」と幸助が言ったような気がするが、気にしないで置こう。
「次で、最後です。木村 朝美さん。おめでとう」
パチパチパチパチと拍手が沸き起こった。
「う、嘘だろ・・・」
俺が、そう口からこぼれたのは、誰にも聞えなかったのだろう。
「わ〜!ありがとうございます」
朝美が立ち上がり、喜びの表情を見せた。
「ふう兄! やったよ私!」
再びこっちへ向かって走ってくる。
しかし、俺の前に机があるので、そこに衝突した朝美。
再び痛がる朝美を見て、なんだか可哀想に思えた。



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