「木村 朝美です! 映画は大好きなんですけど、演技の方は全然駄目なんでご指導の方よろしくおねがいします」
今は放課後の部活真最中。
1年生が自己紹介しているところだ。
今年は5人と去年より一人多い数。
6つの机でだいたいの丸と言うより、6角形になるように机を引っ付ける。
1年生は1年生で、2年生は2年生で集まるようにして。
最初は亮平がまず挨拶をして、それから1年生と言う順番だ。
何故か俺の隣に朝美が居るが、そんなことは気にせずに話を先に進める。
一年生のトップバッターは俺の隣に居る朝美。
次は、その隣の佐原 澄という女の子。
自己紹介をしようとして、その場に立とうとするが、立つ反動が強すぎて椅子が後ろにふっ飛んだ。
「あわわわ」と言いながら椅子を元に戻す姿に、ナイスキャラクターの異名を俺はささげよう。
「え、え〜と・・・あ〜と・・・う〜と・・・」
何を言おうとしているのか迷っている澄に、亮平は笑顔で「ゆっくり、名前から言って見て」と、女落しの笑顔で言った。
「は、はい! さ、佐原 澄です。性格は見たまんまとよく言われます! え、えっと・・・よろしくおねがいちまつぅ! ・・・じゃなくて、おねがいします!」
一同微笑。
微笑と言っても、無理やり笑いを堪えている微笑だ。
「草創 倉見です。映画が大好きで、この映画研究部に入部しました」
この映画研究部には珍しく、普通の女の子。
しかし、こういう子に限って裏があるんだろうな。
「山本 苺です。映画好き。よろしく・・・お願いします」
幸助の目が明らかにこの子を狙ってる。
幸助の標的か。
「じゃあ次は俺っすね。笠井 俊です。まぁ演技は得意としてるほうなんで、よろしくお願いします」
演技が上手なのは知ってる。
選考会の時、嫌と言うほど見たからな。
それにしても美少年。これは亮平の次に出れそうなタイプだな。
パチパチパチと拍手が鳴り終わって、次は2年生の番だ。
「僕は天春 高良です。去年は主役の友人役みたいな感じでした」
高良はなかなかの演技だったな。
因みに、去年の主役は亮平だ。
ヒロインは由美先輩。
俺はと言うと、超脇役だ。
場所はと言うと・・・明日香の真ん前だ。
「俺は飯塚 克紀です。好きな子のタイプは」
「「「言わなくていい」」」
俺と亮平と悠太の声がハモった。
こいつの話は長くなるからな。ここら辺で終わらしておくのがベストだろう。
「先輩・・・酷いッス」
「え〜と私は、佐原 神子です」
「そんでもって、明日香のおもちゃね」
神子が名前を言い終わるのと同時に、俺は1年生に向かってそういった。
「風紀センパイ! そんなこと吹き込まないでくださいよ!」
顔を赤らめている神子。
あんなところが面白いんだよね。
「私、小倉 海」
そう言って、自己紹介を終わった。
この子は変わった子で、光雄先輩以上の不思議っこだ。
だから演技になると、人格が変わる。
去年のあの日はビックリしたな。
それからは俺達3年生の自己紹介をした。
一人ひとり順調・・・と言えるのか分からないが、終わっていった。
帰り。
俺達映画研究部は、絆を深めるために歓迎会を開くことになった。
俺はそんな面倒な事はしたくないので、帰ることにしたんだ。
一人で帰る道。
カラスの鳴き声が妙に不安を感じられた。
やめておけばよかったと気付いたのは、夕寝をして起きた時だった。
俺が目をさめたのは夜中の9時45分。
その原因は明日香からの電話。
俺は自分の携帯を片手にとって、電話に出た。
「もしも〜し」
『もしもし! 風紀もうご飯食べた? って当たり前か』
食べてないんだけど。
『まぁ食べてないと思うから、迎えに着てよ! ね? 場所はねぇ、デザニィー』
プープープー。
って切るのかよ。
俺は迎えに行く準備をして、家を出た。
デザニィーに着くと、明日香は手でこっちこっちと招き入れるような形をした。
男共の目が明日香に向けれている。
そしてその彼氏の俺へと視線が変わった。
なんというか、殺意と言う視線も混じっていそうな雰囲気だ。
俺は少し俯き加減で明日香の席へと近寄る。
「やっと来たね風紀〜」と、明日香。
「おう風紀遅いぞ」と、亮平。
「待ってたのよ〜ん」と、幸助。
「風紀だ風紀だ!」と、悠太。
「こ、こんにちは」と、静香と五十鈴。
その他略。
「・・・そういうことね」
俺は後ろを向き出口へと向かった。
「ま、待てよ風紀!明日香はもう帰るから」
俺が亮平の方を向くと、亮平がウィンク。
ぐえ気持ち悪い。
明日香が待ってぇ! って言いながらこっちに走ってきた。
俺は、アッシーかよ。
そう思いながら、このデザニィーを出た。



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