学校中を探し回ったが、奴の姿を見つけ出すことは出来なかった。
まぁ当然のごとく、俺はやつの顔を知らないわけで、無意味に学校中を走っていたのだ。
それにしても、奴のあの言葉。
『お前が明日香ちゃんを連れてくると逆に困ったことになるからな』が気になって仕方ない。
なんで連れてくると困るんだ。
あのナイスタイミングの亮平の登場はなんだったのか。
そればかり、俺の頭の中を駆け巡る。
その瞬間、ストーカーと言う文字が頭の中に流れた。
「明日香が・・・危ない」
俺がそう呟いたとき、亮平は丁度一階の下駄箱へと降りてきた。
「見つかったか?」
その質問に俺が答えようとは思わない。
「お前、今日の朝手紙みたいなものが、下駄箱の中に入ってなかったか」
「あぁ入ってたよ。一人で放課後屋上に来てください♪ って」
騙されたか。
「明日香がヤバイ」
まだ根拠は無いが、明日香が危ないと思う。
奴は、最初からこれが目的だったんだ。
明日香の誘拐。
捩れた愛情か。
「糞! 俺がもっとしっかり考えていれば」
俺はダッシュで、家へと向かった。
明日香がしっかり家へと着いていればいいのだが。
走る帰り道。
程度に拳の痛みが俺を衰えさせる。
明日香が心配だ。
心の中で何度も何度も「無事で居てくれ」と願った。
4階まで階段で一気に上り、自分の家のドアを思いっきり開けた。
「明日香!」
シーンとしている家の中に俺の声だけが響く。
「明日香? 居ないのか?」
明日香の部屋へと俺は靴を履いたまま向かった。
ノックはしない。ドンと大きな音を立てて入る。
「ス〜ス〜ス〜」と明日香の小さな寝息が聞こえ、いっきに俺の腰の力は抜けた。
あ・・・明日香、いるなら返事しろってこの野郎。
明日香の部屋のドにもたれかかっていると、亮平から電話があった。
『明日香は?』
「寝てる」
『・・・は?』
いや、は? と言われても、寝てるもんは寝てるんだ。仕方ないことだろう。
『そっか。なら安心だな。じゃあ切るぞ』
プープープーと虚しい響きが俺の耳元に入る。
俺は、靴を脱いでいないことを思い出し、靴を脱ぎ捨て明日香の元へと近寄った。
「心配させんなよ」
俺はそう言って、明日香のベットの隣で座り、頭をベットに寝かせ、明日香の頭を撫でる。
自然に手が動いていった証だ。全く拒絶反応が無い。
その瞬間にふわっと心が安らいだ。
「あいつら訳わかんねぇ」
何時の間にか俺は眠りについていた。
目が覚めると、俺の視界に写ったものは見覚えのある部屋の光景。
当たり前のように、明日香の部屋の光景だ。
俺はその場に立つと、背中にかかっていた毛布が落ちる。
ベットには明日香は居ない。
俺は重たい足取りで、いつものリビングへと向かった。
「明日香ぁ〜?」
目を擦りながらそういうが、返事は無い。
灯りは点いているが、明日香の姿は無い。
「明日香ぁ? 明日香!?」
その瞬間、家のドアがガチャと開いた。
「風紀ぃ! おっはぁ〜!」
私服の明日香が帰ってきた。
「お、おっはぁ。何処行ってたんだよ?」
「え? 買い物ぉ〜。ちょっとケチャップ切らしててさぁ。それにしても風紀! ちゃんと靴は玄関で脱がなきゃ駄目でしょ?」
「お、おう」
「もう・・・」と溜息をつきながら、俺の横を通って台所へと向かう。
その光景は自然で、心の底から安心感が湧き出てきた。

――――――次の日。
俺は自分の部屋から着替えて出ると、最近、何故か朝家に居る亮平と共に朝食を取った。
「あ〜痛い」
亮平は受けなれていないのか、昨日の7発のパンチが効いてるみたいだ。
「そんなんじゃ男になれんぞ。亮平君」
ちょっと、師匠っぽく言った俺。
明日香は、何の事? みたいな顔をして俺たちを見ている。
「なんでもないよ。ハハハハハ」と誤魔化しておいたが、大丈夫だったのだろうか。
学校へ行く準備も終え、家を出た。
いつも通りの道を通り学校へと向かう。
学校に入る校門前から、学校の中が騒がしかったのが分かった。
「あ〜騒がしいね」
隣に居る亮平が頭を掻きながらそう言った。
「昨日、あんな数の男共が屋上で倒れていたら、騒ぎにはなるわな」
犯人が分からぬまま、時は過ぎていった。



しかし、俺たちの予想を超えた出来事が待っていた。



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