私はただ走っていた。
泣きながら走っていた。
何でだろう?
この気持は何だろう?
私が走る理由は分からない。
後ろからは聞き覚えのある優しい声が。
「楓!」
私はただ走っていた。

あれは、放課後のことだった。
「ねぇ、誰か郁知らない?」
私は下駄箱で郁を待っていた。
「知らないよ」
「そっか。ありがと」
ん〜あれこれなんだかんだあって待つこと20分。
帰りのチャイムが鳴り次第、郁は私の前から姿を消した。
「まさか、真苗ちゃんと決闘」
まさか、そんなわけがあるまい。
あれはいくらなんでも冗談だろう。
じゃあ何だ?
もしや告白か!?
それならその場面を見て、彼をいじめるしかない。
ククク。ナイスな考えだ私。
「フフフフフ」
私が、不敵な笑みをこぼしていると、仲の良い友達が私にこういって来た。
「あれ?楓?まだこんな所に居たの?と言うことは、まだ真苗と菊池君は話し合ってるのか」
フ〜ンみたいな雰囲気をしながら彼女はそういった。
「え?真苗と?何処で?」
「さぁ?そこまでは知らないけど、あぁ特別棟の方へと歩いて行ったよ?」
・・・うっそ〜ん!
本当に決闘する気?真苗さん。
「あ、ありがとね!」
私は彼女に礼を言うと駆け足で特別棟へと向かった。
「真苗〜」
私がそう呼びかけるが、今は放課後。
特に何の音もしない。
私の声が虚しく響くだけである。
「誰か〜」
その言葉は間違っているであろう。
「郁〜?」
呼びかけるが応答無し。
「こちら、楓、応答がありません!どうしましょうか?」
私は一人虚しく時計に向かってそう言う。
そういや昔、なんちゃらレンジャーって言うのを見て、よくこうしたっけ。
私が思い出に浸りながら、なんちゃらレンジャーの真似をしてると、後ろから声がした。
「なにしてんの?」
新斗君の声だ。
「し、新斗君!」
「やぁ」
「・・・」
「・・・」
「見てた?」
軽く頷く。
「見てなかったことに?」
「そうしてくれると有難い」
新斗君はグットマークを見せ、「オッケィ」と答えた。
その行動は、何世代か前の行動。
簡単に言えば古いというのだが、それは先ほどのことあるし、黙っておこう。
「んで、なにしてんの?」
新斗君が不思議そうな顔でそう聞いてきた。
「えっとねえっとね。真苗と郁探してるの」
「その二人だけの名前を聞くと、変わった組み合わせだな」
それ同感。
「それで、何で探してるの?」
「えっと、真苗が決闘するとか言い出して」
「へぇ〜」と何の不思議そうもない新斗君。
おいおいちょっと待ってくれ。
彼らがその行動をとるのは誰でも不思議だろう。
「へぇ〜で終わる問題なの!?」
「決闘。面白そうじゃん!」
面白そうとか、面白そうじゃないとかで決まる問題じゃないだろう。
「何処にいったか知らない?」
もう単刀直入に聞くことにした。
「あぁ郁なら見かけたよ。そっちの階段上がっていった」
そっち?
新斗君が向ける指の方向へと目を向ける。
「あっちって・・・」
「うん屋上」
え〜!?
決闘場所&告白の、学校裏に引き続きベタベタな場所じゃん!
そんなに真苗っちはベタな場所が好きなのか。
「じゃあ行って来る!」
私はそういい、屋上へと向かった。
ひとつひとつ階段を上がっていく。
最後の2、3段の所で足が止まった。
私たちの学校、普通屋上へは普通いけないはずなのだが。
これまた謎だ。
そこまでしてベタな場所がよかったのか。
ドアの鍵は・・・壊れてる?
何かであけた感じが素人の私にでも分かった。
ゆっくりとドアに手を掛けた。
「じゃあ!俺の気持はどうなるんだよ!」
郁の叫び声。
「い、郁?」
息を潜める程度の小さな声で彼の名前を呼んだ。
「楓が可哀想。それ言ったら、楓壊れる」
真苗の声だ。
私が壊れる?
それを言ったら?
何のこと?
「何でだよ。俺の気持ちは・・・あいつへの感情は!?」
郁の乱れた声。
どうしたの?
あいつって誰?
「この、楓を好きって気持は誰にぶつければいいんだよ」
あぁLikeの話ね。
「そんなこと、知らない。楓はその言葉を望んではいない」
ってか、もう昨日聞いちゃってるしね。
「俺は、あいつを愛してる!LikeじゃなくてLoveなんだよ!」
へぇ〜Loveねぇ。
・・・・・・・・・・・・・。
へ?Love!?
ガタン!
その言葉を聞いて、私は荷物を落としてしまった。
ひょうしに、屋上のドアが開く。
「か、楓!」
郁の声だ。
彼は、私を「愛してる」と言った。
「Love」の感情だといった。
なに?
よく分からないよ。
私は、階段を駆け下りた。
そして私はただ走っていた。



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